2019年11月30日 ディスクユニオンお茶の水駅前店で開催されたロック・フォトグラファー有賀幹夫氏のトーク・イベントの様子をレポートする。
有賀氏は、日本人で唯一 ザ・ローリング・ストーンズのオフィシャルに選ばれたフォトグラファー。当日会場には多くのストーンズ・ファンがつめかけ、有賀氏が語る撮影エピソードに聞き入っていた。
Contents
- 1 有賀幹夫 プロフィール
- 2 オフィシャル・フォトグラファーとは?
- 3 12月5日まで開催【HARD BOP!! PRESENTS -LET IT BLEED – THE ROLLING STONES フェア・転がる石は苔むさずだぜ、コノヤロー!!】
- 4 日本で行われたローリング・ストーンズのライブ全曲を撮影したのは有賀氏だけ。
- 5 撮影エピソード:LED照明が背景だと大変…
- 6 開催する国によってライブの雰囲気は違う
- 7 オフィシャル・フォトグラファーに決まった時は…
- 8 ローリング・ストーンズを撮影するのは楽しい事ばかりでは無い
- 9 来年はローリング・ストーンズ初来日から30年
- 10 glamb×THE ROLLING STONES COLLABORATION
有賀幹夫 プロフィール
80年代半ばより音楽フィールドを中心に活動を始め、RCサクセション、ザ・ブルーハーツ、浅川マキ等を撮影。
1990年、ザ・ローリング・ストーンズ初来日にあたりオフィシャル・フォトグラファーとして採用され、以降2014年までの全ての来日公演を撮影する。
これらの写真はバンド制作物に多数使用され、2019年に日本でも開催されたザ・ローリング・ストーンズ展「Exhibitionism」では唯一の日本人クリエイターとして作品提供者に名を刻む。
オフィシャル・フォトグラファーとは?
バンドがライブの撮影を許可したフォトグラファー、それがオフィシャル・フォトグラファーである。現在では様々なライブで、スマフォ等を使用したファンの撮影もOKとなっているが、全曲を制限なく撮れる訳ではないし、公式で使用される事はまずない。
オフィシャル・フォトグラファーになれば、バンドの公式から発表される全ての媒体(ソーシャルメディア含む)で、その写真が使われる他、その後にリリースされる写真集や、CD、DVD、グッズ等で使われる事もある。
もちろん、そんな様々な用途で使われる可能性のある写真を撮影すると言う事は、プロとして高いクオリティの写真が撮れる事は基本で、それだけでは無いプラスアルファの何かが無ければオフィシャル・フォトグラファーには選ばれない。
そんな狭き門のオフィシャル・フォトグラファー、ましてや世界中に多くのファンを持ち、ロック好きなら知らない人はいない「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」や「サティスファクション」等々、数々の世界的ヒット曲を持ち、彼らを知らない人でもロゴであるベロマークを一度は目にした事がある「あの」ローリング・ストーンズのオフィシャル・フォトグラファーに選ばれるのは、正に難関中の難関である事は間違いない。
有賀幹夫氏は、そんな難関の座を射止めたロック・フォトグラファーである。
12月5日まで開催【HARD BOP!! PRESENTS -LET IT BLEED – THE ROLLING STONES フェア・転がる石は苔むさずだぜ、コノヤロー!!】
今回のトークイベントは、ローリング・ストーンズ『レット・イット・ブリード』50周年記念エディション他、以下リンクの作品リリースを記念して、ディスクユニオンお茶の水駅前店で、12月5日まで開催されているイベント【HARD BOP!! PRESENTS -LET IT BLEED – THE ROLLING STONES フェア・転がる石は苔むさずだぜ、コノヤロー!!】の一環として開催された。
イベントのタイトルにある「HARD BOP!!」はクールなロック誌の事。11月14日に発売された12月号では、表紙も含め有賀氏が撮影したローリング・ストーンズの「NO FILTER WORLD TOUR」他の写真や、ここ数年のストーンズ・ツアーについての、有賀氏のインタビューも掲載されている。
さらにディスクユニオンお茶の水駅前店では、「HARD BOP!!」に掲載されている写真を含む、有賀氏撮影写真「BEST OF 2012-2019 THE ROLLING STONES」 を、12月5日まで展示、受注販売も行っている。非常に貴重な機会なので興味のある方は、ぜひ詳細をディスクユニオンお茶の水駅前店のブログにてチェックして欲しい。
日本で行われたローリング・ストーンズのライブ全曲を撮影したのは有賀氏だけ。
ローリング・ストーンズは、1973年に来日公演が予定されていたが、過去の大麻所持を理由に当時の外務省が入国を拒否し、中止となっている。その後1990年に初来日を果たし、95年、98年、2003年、06年、そして2014年と計6回来日公演を行っている。これらのライブ全曲を撮影したのは、オフィシャル・フォトグラファーの有賀氏だけだそうだ。
メディアや他国のフォトグラファーは、ライブ冒頭の2曲しか撮影の許可は下りないとの事。それは現在も変わらないそうで、日本でのオフィシャル・フォトグラファーとは言え、他国でローリング・ストーンズのライブを撮影する場合、有賀氏でもフォトパス申請は必要だそうだ。
有賀氏が海外のストーンズ・ライブを撮影する場合は、ご自身でフォトパス申請を行い、幸いなことに今のところ全て申請は通っているとの事。シビアな世界である。
撮影エピソード:LED照明が背景だと大変…
最近のローリング・ストーンズのライブでは、ステージセットにLED照明や大きなモニターが使用されているが、これらはステージ全体が見える状況で映えるセットなので、逆に写真を近くで撮影する際には、背景がうるさくなるので非常に難しいそうだ。
メンバーを撮影しようとすると、モニターに大きく映し出された本人の足元が写りこむなんて事もあり、なかなか大変らしい。
また海外のライブの場合、先ほども書いたようにライブ冒頭2曲しか撮影できないのに、1曲目が非常に短い曲「I Wanna Be Your Man」でまいった事もあったそうだ。
開催する国によってライブの雰囲気は違う
2013年イギリス・ハイドパークで開催されたライブは、前年にローリング・ストーンズが結成50周年記念のライブで、レディ・ガガ等と共演した事もあり、若い人が沢山来ていて非常に良い雰囲気だったとの事。
観客や野外・屋内等ステージの状況、メンバーの体調によってもライブの雰囲気は全く違い、2015年アメリカ・サンディエゴで行われたライブでのキース・リチャーズの動きが、日本でのライブとは異なり、余りの激しさにビックリした事もあると、有賀氏は話す。
だからと言って、日本のライブが良くないとか、観客が静かすぎると言う訳ではなく、日本には日本の独特のノリがあるとの事。ただ移動によるメンバーの体調もライブの動きには反映されるから、そう言う違いは当然あるよねと話していた。
オフィシャル・フォトグラファーに決まった時は…
今から30年前の年末、有賀氏はローリング・ストーンズが当時一任していたNYのPR会社から、 マネジメントによるオーディション用資料として、これまで撮影した写真の作品集(ブック)の提出を求められたとの事。
有賀氏は「何かで急に呼ばれたりする事もあるかも知れない」と思い、NYに長期滞在をしたそうだ。そして12月の末に、遂にツアー広報担当者から「ミックとキースのマネージャーが、君を日本公演オフィシャル・フォトグラファーとして採用することに合意したのでそのつもりでいるように。ただし!最終的に本当にストーンズが日本に上陸できるのか?公演が行われるのか?は、こちらとしても言い切れない」と連絡があったそうだ。
その言葉を電話で聞いた時は、ただただ身震いがした…と、有賀氏は話していた。
もちろんそこに至るまで、様々な経験と並みならぬ努力を重ねたからこそ、有賀氏の写真がローリング・ストーンズの目に留まり、オフィシャル・カメラマンの採用が決定した訳だが、それでもキャリアから言えば、まだまだ若手と言っても過言で無い頃である。
その言葉を聞いた瞬間、言葉にならない感情が、全身を駆け抜けたであろう事は想像に難く無い。
因みに、その頃はまだ洋楽アーティストを数多くは撮っておらず、撮っていてもパンク系が多かった有賀氏は、ブックの提出を求められた際、ローリング・ストーンズには余り関係はないがビリー・ジョエル等の写真を入れて提出。
その他に日本のアーティストやバンドの写真も、邦楽とは言えロック写真として最高の出来だからと思って入れたが、マネジメントのチェック前に、広報担当者の手によってブックから全て外されていた事がわかり、大きなショックを受けたのと同時に、世界を知らされたというか、洗礼を受けたとも話していた。
ローリング・ストーンズを撮影するのは楽しい事ばかりでは無い
ロック好き、そして写真を撮る人にとって、ローリング・ストーンズを撮影すると言う事、それもオフィシャルとして撮影すると言う事は、正しく夢の様な話だろう。
しかし、あれだけの規模のバンドを撮影するのは、楽しい事ばかりとは限らないそうだ。近年ローリング・ストーンズ側の組織が一変し、それまで関係を築き上げてきた人達がほとんど居なくなり、写真チェックの手順も大きく変わり、大変な思いをした事もあるそうだ。
また、今までフィルムで撮影していた写真をデジタル・データ化した際に、キース・リチャーズのマネージャーに見せる為、メールで送ったら「一度チェックした写真を二度見る事は【けして(NOT)】ない!二度手間をかけさせるな!!!!」と激怒メールを食らったこともあるとの事。
しかし、今回の展示の為にセレクトした写真を、そのマネージャーに送った際には、「やはりMikioの写真は素晴らしい!」と最高の賛辞をスグに送り返してくれたそうだ。
来年はローリング・ストーンズ初来日から30年
来年2020年は、ローリング・ストーンズが1990年に初来日してから30年となる。今回もココには書けないオフレコの話が満載だったが、なんと!その初来日30周年を記念して、来年春頃にもディスクユニオンお茶の水駅前店で、有賀幹夫氏のトーク・イベントを開催予定との事。
その際にはライブ以外のストーンズの写真を展示する事も考えているそうだ。 詳細は後日発表との事だが、今回参加した人はモチロン、参加出来なかった人も、ぜひ次の機会には足を運んで欲しい。本当に「へぇ~!」「なるほど!」と言う「ココだけ話」が満載のスペシャルなトーク・イベントだった。
glamb×THE ROLLING STONES COLLABORATION
“Grunge for Luxury”をブランドコンセプトに、エレガントなロックファッションを提案する 《glamb》が、 ローリング・ストーンズとのコラボレーションによるカプセルコレクションを2019 年10 月25 日(金)に発表した。
同コレクションのWebsiteには有賀氏撮影の写真が多数掲載されている他、ローリング・ストーンズとの出会いから想い、そしてオフィシャル・フォトグラファーに選ばれるまでの経緯などについて語るインタビューも掲載されている。
またディスクユニオンお茶の水駅前店のポップアップスペースでも、 《glamb》の一部商品の販売を行っているので、来店した際にはぜひチェックして欲しい。