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映画「父は憶えている」アクタン・アリム・クバト監督インタビュー『頭の中ではなく、心の中に歌はある』 (特集)

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第96回アカデミー賞 国際長編映画賞 キルギス代表 選出作品である映画「父は憶えている」。2023年12月1日より新宿武蔵野館他にて全国順次公開される本作の監督であり、主演もしたアクタン・アリム・クバト氏のインタビューを特集にてお届けする。

また「歌」が重要な役割を果たす本作の試写会に参加した、エレクトロ・テクノポップアーティスト「ぽらぽら」のコメントも併せて紹介する。


映画「父は憶えている」

2023年12月1日より新宿武蔵野館他にて全国順次公開される映画「父は憶えている」。

本作は、第15回アジア太平洋映画賞(Asia Pacific Screen Awards・略称APSA)審査員グランプリ、第16回ユーラシア国際映画祭(Eurasia International Film Festival) グランプリを受賞。

第35回東京国際映画祭コンペティション部門にも正式出品と、既に幾つかの賞を受賞・映画祭に正式出品されている他、第96回アカデミー賞 国際長編映画賞 キルギス代表にも選出されている。

映画「父は憶えている」特設サイト
https://www.bitters.co.jp/oboeteiru/
X(Twitter)@Aktan_jp
https://twitter.com/Aktan_jp

ストーリー

キルギスの村にひとりの男が帰ってきた。23年前にロシアに出稼ぎに行ったきり行方がわからなかったザールクだ。

記憶と言葉を失ったその姿に家族や村人たちは動揺するも、そこに妻ウムスナイの姿はなかった――。

心配をよそに、ザールクは溢れる村のゴミを黙々と片付ける。息子クバトは、父の記憶を呼び覚ますために家族のアルバムを見せる。その片隅にはザールクとウムスナイが映る古い写真があった…。

無邪気に慕ってくる孫、村人とのぎこちない交流、穏やかな村の暮らし――。

そんな中、村の権力者による圧力や、近代化の波にのまれ変わっていく故郷の姿が、否応なくザールクに迫ってくる。

果たして、家族や故郷の思い出は甦るのだろうか?そんな時、家族を結びつける思い出の木の傍から懐かしい歌声が聞こえてくる…。

作品情報

ⓒKyrgyzfilm, Oy Art, Bitters End, Volya Films, Mandra Films

  • 映画タイトル
    「父は憶えている」
  • 監督・主演
    アクタン・アリム・クバト
  • 作品情報
    2022年/キルギス・日本・オランダ・フランス/カラー1:1.85/105分/キルギス語・アラビア語・英語
  • 英題
    This is What I Remember
  • 原題
    Esimde
  • 配給
    ビターズ・エンド
  • 公開スケジュール
    2023年12月1日より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
  • 特設サイト
    https://www.bitters.co.jp/oboeteiru/

アーティスト・ぽらぽら。
コメント

公開を前に行われた映画「父は憶えている」の試写会に、エレクトロ・テクノポップアーティストの「ぽらぽら」が参加。ミュージシャンらしいコメントを寄せてくれた。

現代の生活の中で、常に日常と深く密接している音楽。誰しも思い出の音楽があると思いますが、この映画の登場人物たちにもまた思い出の歌がありました。

「記憶と言葉を失って帰ってきた父」と「村の権力者と再婚した元妻」との心の奥に深く刻まれた歌。

1度は離れ離れになってしまっても、この「思い出の歌」が父の記憶を刺激し、家族の固い絆が再び…。

そんな奇跡をも実現させるのが「音楽」の力だと改めて教えてくれる映画でした。音楽は人間の本能に語りかける、そんなパワーを持っていると確信することができました。

ぽらぽら。

ぽらぽら。プロフィール

『ふわふわ+ピコピコ』サウンドをコンセプトとしたセルフ・プロデュース・プロジェクト「ぽらぽら。」。

自身で作曲、作詞、アレンジ、デザインとマルチにこなすSingerSongWriter。

Website
http://www.porapora.net

アクタン・アリム・クバト監督 インタビュー

映画「父は憶えている」より
ⓒKyrgyzfilm, Oy Art, Bitters End, Volya Films, Mandra Films

映画「父は憶えている」の監督であり、主人公ザールクを演じるのは、中央アジア・キルギスを代表する名匠アクタン・アリム・クバト氏。

その評価は、中央アジアのみならず、ヨーロッパでも非常に高く、2023年7月にはフランス文化省より 芸術文化勲章「シュヴァリエ」を授与されている。

そのアクタン監督にオンラインにてインタビューする機会を、Onigiri Mediaは幸運な事に得る事が出来た。

短い時間ではあったが、映画の舞台であり監督の国でもあるキルギス共和国についてや、本作について、さらには日本のファンへのメッセージなども頂いた。

キルギス共和国について

キルギス共和国は、かつてキルギスタンとも呼ばれていた国。1993年に国名をキルギス共和国に変更したが、現在でも、このキルギスタンは正式別称として使われている。

キルギスはユーラシア大陸のほぼ中央に位置する山岳の国で、「中央アジアのスイス」とも呼ばれることがある。

国土の9割が標高1500ⅿ以上に位置し、中央アジアの中で唯一国内に砂漠が存在しない国としても知られている。

古より遊牧の民が行き交い、カラハン朝の都が栄え、玄奘三蔵も訪れたシルクロードの要だった地でもある。

キルギス共和国・政府観光局サイト
http://kyrgyzstan.co.jp/

そんな「キルギス共和国」は、アクタン・アリム・クバト監督にとってどんな国なのか?どんなところが魅力なのか?を先ずは伺った。

※インタビューは2023年11月9日オンラインにて実施。言語はロシア語(逐次通訳あり)。

アクタン・アリム・クバト監督
Актан Арым Кубат / Aktan Arym Kubat

一言で言えば、キルギスはとても美しい国。海外から訪れる観光客も多くいます。

いわゆる歴史的な観光名所と呼ばれるところは少ないのですが、そのぶん自然が大変美しい国です。それが観光客にとって魅力的なのでしょう。

また、もうひとつ言える事は、国民、キルギス人がとても親切で善良だと言う事です。

ソビエト連邦崩壊後、キルギスの経済状況は残念ながら余り思わしくなく、豊かとは言い難いですが、人々はとても親切です。

キルギスの1番の魅力、最も価値のあるものは?と聞かれれば、私は「キルギス人だ」と答えます。

アクタン・アリム・クバト監督

実話を元にした作品

映画「父は憶えている」は、アクタン・アリム・クバト監督が母国のインターネットニュースで見つけた「実話」を元に制作された作品。

そこで「このニュースが気になった理由」や「この実話を通して描きたかった事」について質問をした。

いわゆる「記憶を失った人」を描く事が、映画人の私にとって興味深かったのが、大きな理由です。

本作の主人公 ザールクは、ソ連崩壊後に仕事を求めて国外にでて、長年消息を絶ち、その後 国(キルギス)に戻って来るのですが、その消息を絶っていた間に、どれだけ彼の周りに居た人が変わってしまったのか。

そして彼がかつて住んでいた環境や宗教等が、どの様に変わったのか。そう言った事を描くのが面白いと思いました。

変貌ぶりですね。人々や周りの環境、社会情勢の変貌を、記憶と言葉を失った人間と言う「プリズム」を通して描く事で、その「変貌ぶり」をよりハッキリと見せられるのではないかと考えました。

アクタン・アリム・クバト監督

歌が象徴すること

本作では「家族を結びつける思い出の木の傍から聞こえた 懐かしい歌声」が、主人公ザールクが失った記憶に影響を与える。

記憶を呼び起こす、または蘇らせるきっかけには「香り」や「視覚」など、様々なものがあると思うが、本作では なぜ「歌」にしたのか?監督に伺った。

その質問にお答えするために、先ずは面白いエピソードを1つご紹介したいと思います。本作の脚本を書いている時に、フランス人のプロデューサーが紹介してくれた話です。

彼の知り合いに誰のことも憶えていない、何も憶えていない、いわゆる「記憶喪失」になってしまった人がいたのですが、ある1つの歌を覚えていたそうなんです。

誰かがその歌を歌ったら、その人も一緒に歌い始めたと。つまりその歌を聴くことによって記憶の一部が蘇ったわけです。その話を聞いて非常に面白いと思いました。

歌を歌うこと、歌は、キルギス人にとって非常に重要な意味を持っています。

「頭の中ではなく、心の中に歌はある」あるいは「心が歌う」と言う言葉、表現が我々の民族にはあります。

つまり「歌」は心に呼びかけるもの、本作で言えば主人公 ザールクの、頭の、記憶の奥底に閉じ込められてしまったものを掻き立て、刺激し、呼び起こすもの。

「歌」にはそう言ったチカラがあるのではないかと思ったのです。

そして、そのチカラは「愛情」があるからこそ発揮される。つまり歌は「愛の象徴」でもある訳です。本作で歌われる歌も「愛」に関する歌なんですよ。

アクタン・アリム・クバト監督

日本のファンへの
メッセージ

最後に日本の観客・ファンへのメッセージを、アクタン・アリム・クバト監督から頂いた。

ぜひ劇場に足をお運び頂き、私の作品をご覧になってください。心からの満足を得られるのではないか、と思っています。

そして私の国キルギスの美しさと言うものを、堪能していただけるのではないかと思います。

アクタン・アリム・クバト監督

オンラインとは言え、フランス文化省より 芸術文化勲章「シュヴァリエ」を授与されている偉大な監督へのインタビュー。

気難しい人であったらどうしよう、監督が本作で演じたザールクの様に無口な人だったら…と、取材前に気を揉んでいたのだが、それは完全なる杞憂で終わった。

コチラからの質問に、優しく、真摯にアクタン・アリム・クバト監督は答えてくれた。

キルギスの雄大で美しい景色を舞台にした本作だが、人々の佇まい、やり取りからは、なぜか昔の日本的な雰囲気も感じられた。寡黙だが愛情深い人々…。

果たして「歌」のチカラによって、ザールクの記憶は蘇るのか? ぜひ劇場に足をお運び頂き、その行方を見て欲しい。

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おにぎり1号・Tomoko Davies-Tanaka
Onigiri Media メイン・ライター おにぎり1号こと Tomoko Davies-Tanaka (Team Little-Big) は、フリーランスPRエージェント。海外⇔国内、英語⇔日本語業務を中心に、スモールビジネスのPR業務のサポート他、コーディネーションやブッキングも行っています。 インタビュー記事 https://ledgeweb.com/740/