マルチプラットフォームアーティスト。シンガーソングライター / パフォーマー / ダンサー / ストーリーテラー / 脚本・小説家であるアーティスト エコツミ(Ekotumi)。
日本神話をモチーフに、女性視点で再構築した作品を歌、舞、言葉を用い、スポークン・ワードの世界で表現してきた彼女が、2023年「母になる」と言う新しい経験をした。そこでOnigiri Mediaでは「母親」になったエコツミに、出産の事、現在の心境、今後の活動についてインタビューをした。(特集)
エコツミ / Ekotumi
プロフィール
マルチプラットフォームアーティスト。シンガーソングライター / パフォーマー / ダンサー / ストーリーテラー / 脚本・小説家。
日本神話をモチーフに、女性視点で再構築した作品を歌、舞、言葉を用い、スポークン・ワードの世界で表現する。東京都出身。早稲田大学卒。神社検定1級。
数多くの舞台・ミュージカルに出演し、在学中に映画挿入歌にて歌手活動をスタート。
言葉の語源にこだわる独特の詩とメロディ、そして舞台演出が評価され、ライブ公演、PV、イメージソング、ゲー ム主題歌など、多方面に活躍。
2010年からは、歌と舞を用い日本神話に独自の解釈を加えた和風歌劇「新訳古事記 シリーズ」を展開。2015年以降はヨーロッパを中心に世界各国でコンサート公演を行う。パリ、ロンドン、リトアニアでは単独公演も行い、各地で高い評価を得た。
アーティストとして、自身のパフォーマンス映像がベルリン「WomenCinemakers」に選出される。
Anderson Sudario氏とのコラボレーション作品が、KDCC北九州デジタルクリエーターコンテストパフォーミング・アート部門を受賞。2021年には、地域芸術祭 MMM にてコミュニティアート作品が大賞を受賞した。
コロナ禍における作品も展開し、ロックダウン期間に世界中の協力を経てフィールドレコーディングを行った音楽作品群「covid19-20 project」を制作。
飛沫の心配なく作品を鑑賞することができる 360 度 歌舞ホログラム作品「リトルゴット 少名毘古那」はベルギーで展示された。
女性の可能性を模索し、妊娠9ヶ月で踊るマタニティミュージックビデオや、妊娠・出産の喜びと不安を表現したマタニティヌード作品、NFTアート「Maternity Eternity」を制作。
現在、日本神話を世界に発信する特異なアーティストとして活動中。一児の母。
Website
https://www.ekotumi.jp/
エコツミ / Ekotumi
インタビュー
マルチプラットフォームアーティストとして、音楽及び身体表現はもちろん、脚本や小説も手掛けるエコツミ(Ekotumi)。
彼女が、2023年経験した最も大きな出来事「出産」。
表現活動をするエコツミが、この「出産」及び、その後の「育児」について感じたこと、そして今後の活動についてどの様な考えているのか聞くべく、Onigiri Mediaはインタビューを実施した。
出産について
ーー先ずは無事出産おめでとうございます。子供を産んだ実感、喜び、または想定外だったと思う事について先ずはお聞かせください。
エコツミ)私は「絶対に子供がほしい!」タイプではなかったのですが、不育症という流産を繰り返す体質だったため、無事にうまれてくれた時は心底嬉しかったです。
一瞬前までなにもなかった空間、自分の足の間に、次の瞬間赤ちゃんという生命が存在しているのをみた時、あぁこれが奇跡なんだなと感じました。
ずっとずっと前から、人類はこれを繰り返して今に至っていると思うと、命ってつながっているんだということが身体の奥の方で理解できたような気がします。想定外だったのは、分娩台にのぼってから、わずか9分で生まれてくれたことです(笑)
ーー子供を産む前、子育てや母親になる事について、どの様なイメージを持っていましたか?
エコツミ)正直なところ、大変そうなイメージしかもっていませんでした。
待機児童問題をはじめ、いつも大変そう。自由がなくなりそうだなとか、夫婦仲が悪くなりそうだなとか。
自分にあてはめたときには、産んだらアーティストとして仕事できなくなるだろうなとか、海外ツアーには行けないだろうなと漠然と考えていました。
今考えると不思議なのですが、自分で思い込んでいるそんな「お母さん」というぼんやりとした虚像に、自分をあてはめなくちゃいけないような気がして、正直いやだなぁと思っていました。
出産をしてみて
ーー前の質問に続きますが、実際に子供を産んでみて、持っていたイメージは変わりましたか?
エコツミ)思いっきり変わりました!もちろん時間の制約はあるし、体力的にも大変。
「授乳」なんて平和なイメージだったのに実際は肉体労働。何曲歌ったかな?くらいにエネルギーがもっていかれるという…。
でも、新しい感覚で世界をみつめなおすこともできて、頭の中は以前より自由になりました。「私たちはひとりひとり違う。」ということが当たり前になってきているのに、どうして「お母さん」だけひとつのイメージによせようと思っていたのだろう。今は、お母さんの数だけいろんな「お母さん」がいていいんだと思っています。
ーーエコツミさんはアーティスト活動もされていますが、子供を産んだことで、ご自身の表現や活動に変化はありましたか?特に活動については、以前と同じようにと言う訳にはいかないと思いますが。
エコツミ)たしかに時間は圧倒的に足りないのですが、でも頭の中は前より自由で、いろんな作品のアイデアが浮かんできます。
「これまでと同じように」はできないものの、やる必要もないと思っていて、「今の状態だからできること」にフォーカスをあてています。
妊娠中も、9ヶ月で舞うマタニティミュージックビデオ「ねむるきみ」を制作したり、できることに挑戦していました。
時間も体力も制約がある分、今はいい意味で肩の力がぬけたような気がしています。
実は、ステージは産後2ヶ月から、ツアーは3ヶ月から復帰していて、海外ツアーも来年の春、産後10ヶ月で復帰予定なんです。やりたいことがたくさんあって、大変ですが楽しい毎日です。
出産と言う経験を通じて
ーー最後に、今回の出産と言う経験を通じて感じたことや、それを今後どの様にご自身の表現に結びつけるか等について教えて下さい。
エコツミ)妊娠中、出産後の赤ちゃん連れ外出は困ること、しんどいことが多く、東京の街は健康なビジネスマン向けに作られていると感じました。
たとえばヨーロッパツアーの際には、大荷物なのにエレベーターがなくて困っていると見知らぬ人が手を貸してくれることがよくあるのです。社会が不便だという感覚を共有しているから、周りが困っていると気づけるのかなと思います。
日本はとても便利ですが、同時にみんな自分にとって便利だから、もしかしたらまわりの人にとっては不便かもしれないという想像が乏しくなってしまう。でもそれって、ヨーロッパの人たちよりも日本人が不寛容なのではなく、社会構造の問題のような気がします。
同様に母であることとアーティストであることの両立も、今のままの日本の社会構造だと難しい側面がたくさんあります。
ですが、出産という幸福な出来事が、アート活動の終焉とイコールにならないようにしたくて、色々な挑戦してゆく予定です。
2024年1月19日にはソロ公演を開催するのですが、これはその日1日のアートパフォーマンスでありつつも、出産したアーティストは果たして妊娠前までのように「自身の表現としての作品」を作れるのかという実験でもあります。
私自身、どうなるのかドキドキしているのですが(笑)ぜひみなさんにも会場でその実験を目撃していただきたいです。
ライブ情報
エコツミ・アートパフォーマンス
-Spoken word-「新訳古事記」
- 開催日
2024年1月19日(金) - 時間
開場19:00 開演19:45 - 会場
於南青山MANDALA - チケット
前売 4,200円
当日 4,700円
※共に1ドリンク付 - チケット取扱い
https://ekotumi-kojiki.peatix.com/
言葉 歌 舞 神話
成り立ち 国産み この世界私の中にある太古からの記憶
エコツミ
あなたの中にあるいつかの記憶
- Tracey Emin / トレイシー・エミン
‘There are good artists that have children. They are called men’
「子供がいても素晴らしいアーティストはいるわ。男だけどね。」 - Spoken word
スポークン・ワード(Spoken word)は、歌詞、詩、物語を話す文学の芸術、または芸術的パフォーマンス。 - 古事記
約1300年前に編纂された日本最古の歴史書。上中下巻にわかれており、いわゆる日本神話は上巻に記されている。