沖縄本土復帰50年の前夜となる2022年5月14日沖縄 ミュージックタウン音市場で開催された「Brand-New TRAD 2022」。日本と沖縄の伝統音楽に新たなアプローチで挑戦する3組のアーティスト、The Shamisenists、The SAKISHIMA Meeting、そして民謡クルセイダーズの競演を、前後編のPhotoライブレポートでお届けする(前編)。
Contents
新良幸人
寂空-JACK- 対談
2022年5月14日 沖縄市にあるミュージックタウン音市場で開催された「Brand-New TRAD 2022」。
日本と沖縄の伝統音楽に新たなアプローチで挑戦する3組のアーティスト、The Shamisenists(ザ・シャミセニスト)、The SAKISHIMA Meeting(ザ・サキシマミーティング)、そして民謡クルセイダーズが出演した本イベントに先駆けて、Onigiri MediaではThe Shamisenistsの寂空-JACK-と、The SAKISHIMA Meetingの新良幸人との特別対談記事を掲載した。
https://onigirimedia.com/2022/05/03/arayukito_jack1/
https://onigirimedia.com/2022/05/03/arayukito_jack2/
本対談・後編で寂空-JACK-と、新良幸人は「Brand-New TRAD 2022」について
JACK:コロナ禍で人との距離を取らざるを得ない状況が続いてますけど、ステージ上でも津軽三味線と三弦と会話の様な瞬間があったり、ステージとフロアとの、お客さんとの実際の会話じゃなくても想いが通じる瞬間があったり、あとは楽屋での会話があったり、僕の中では「会話」って言うのがキーワードでして、そう言うことを大事にしながら、沖縄の空気をゆったり感じて演奏をしたいなって想いがあります。
新良幸人:この3組でよかったなって思える形になればいいなって思うね。3組が単純に集まって、ワーっと盛り上がるって言うだけのイベントじゃなくて、楽屋でみんなイイ顔して「またどっかで会おう」って形のライブが出来たら、それが一番素敵じゃないかなって。「また一緒にどっかでやりたいね」って思う様な、それでまた必ずどっかでやるって言う。好きな事を好きなように歌って、楽屋でも小っちゃいドラマがあるみたいな感じになればいいなって。
と、語っていた。
当日、既に梅雨入りした沖縄は連日の雨続きの天気。さらに沖縄本土復帰50年前夜と言うことで、街には少しだけ「ピリっ」とした空気も漂っていた。
そんな中、開催された「Brand-New TRAD 2022」。どんな様子だったかをPhotoレポにて今回はご紹介。さらに普段は見れない楽屋の様子も最後にご紹介する。
さて、Photoレポを始める前にイベントについての感想を、少しだけ先に述べさせてほしい。
日本語には「ハレとケ」と言う言葉がある。ハレ(晴れ、霽れ)はお祭りなどの「非日常」、ケ(褻)は普段の生活である「日常」を表していると言うが、ケは「穢れ(けがれ)」や「気枯れ(けがれ)」を意味する言葉とも言われている。
また、現代では単に天気が良いことを「晴れ」というが、江戸時代まで遡ると長雨が続いた後に天気が回復し、晴れ間がさしたような節目に当たる日についてのみ「晴れ(ハレ)」と記した記録もあると言う。
2019年末から世界を襲った新型コロナウイルスによるパンデミック。コロナ禍が3年弱続く現在の日常は、それ以前の日常とは異なるが、「ケ」または「気枯れ」が長引いている状態と言えると思う。
そんな中、開催された「Brand-New TRAD 2022」は、人々の心に巣くった「ケ」を吹き飛ばす、正に長雨が続いた後の晴れ間の様な「ハレ」の場であった。
Brand-New TRAD 2022
Photoライブレポート(前編)
Photos by Tomohide Ono
Reported by Tomoko Davies-Tanaka
The Shamisenists
「Brand-New TRAD 2022」、1番手は東京からのオルタナティブ・三味線・ロックバンド The Shamisenists。
バンドとしては、初の沖縄での演奏となる彼らは、リード三味線、ベース三味線、ドラムからなる3ピースバンドだが、今回はサポートメンバーとしてキーボーディストも含めた4人編成でのライブとなった。
ただでさえ力強い響きを生み出す津軽三味線を、エフェクターを駆使し、さらに強力にした彼らのサウンドは、会場に集まった人々を1曲目「ISORA REMOTA」から圧倒した。
2曲目「HARE」の後 挨拶が一言入り、3曲目の「HERTZ」からはキーボーディストも参加。
4曲目の新曲「HOLIDAY」のイントロでは、「最後までココに居る皆で、素晴らしいイベントにしましょう。そのトップバッターを担うシャミセニスト。今日はThe SAKISHIMA Meeting、そして民謡クルセイダーズ、諸先輩方に負けない様に頑張るぞー!!!」と寂空-JACK-が叫んだ。
The Shamisenists
Set List
- ISORA REMOTA
- HARE
- HERTZ
- HOLIDAY(新曲)
- Fight Or Flight(新曲)
- Walking On The Moon
- SAKURA
- re:tokyo
The Shamisenistsは、初の沖縄ライブにも関わらず、勢いと迫力あるパフォーマンスで、とアッと言う間に観客を自分たちの世界に引き込んだ。
特に6曲目の「Walking On The Moon」では、バンドが生み出すグルーヴに後押しされる様に、手拍子もドンドン大きくなっていった。
かつてコザと呼ばれた沖縄市では、ハードロック・バンドがラウドなサウンドで、バーやライブハウスなどを大いに沸かせた時代があった。
そんな情景を思い起こさせるような、アツく激しいThe Shamisenistsのパフォーマンスだった。
ぱらだいすうるま島
良い意味で空気をざわめかせたThe Shamisenistsのステージの後、会場には沖縄の心地よい音色が響いた。
今回のイベントでは、各出演者の間をDJチーム ぱらだいすうるま島 選曲による沖縄民謡が彩った。
The SAKISHIMA Meeting
The SAKISHIMA Meeting
(ザ・サキシマミーティング)
客電が落ちると、会場がシンっと静まり返り、期待のこもった心地よい緊張感が走る。
そんな中、The SAKISHIMA Meetingの下地イサム、新良幸人、そしてパーカッション/ドラムの川原大輔が、ステージにゆったりとした足取りで登場した。
三弦の乾いた音色と、2人の巧みなコーラスワークが印象的な「サキシマユニゾン〜ユーニンガイ」で始まったThe SAKISHIMA meetingのステージは、簡単な挨拶を挟んで2曲目、沖縄ポップス界きっての二枚目声と謳われる新良幸人の歌声が冴えわたる「TOME DOME」に続いた。
ボサノバの様な、ジャジーな雰囲気も漂う「TOME DOME」そして3曲目の「風ゆイヤリ」が終わった後、下地イサムの紹介でステージに登場したのは、The Shamisenistsの寂空-JACK-。
新良と軽く拳をタッチして挨拶をすると、「言ったでしょ」と言う意味の下地の楽曲「アンターマナ」によるセッションが始まった。
津軽三味線と三弦による丁々発止なやり取り。新良が「ついてこれるかな?」と言った風情で三弦を弾けば、寂空-JACK-が津軽三味線特有の速弾きで挑み返す。またそれに対して新良もコレでもかとやり返す。
スパニッシュな雰囲気が漂う「アンターマナ」の歌詞は「明日は結婚式だから呑み過ぎないでね(泥酔注意)って言ったでしょ」といった内容との事だが、その責めるような早口の、下地の歌声が2人のやり取りに拍車をかける。
楽器同士、ミュージシャン同士による、楽しくも激しく真剣な掛け合い。ステージ上、そして客席からも、そのヤンチャなバトルに思わず笑みがこぼれたセッションだった。
ヤンチャなセッションの後 流れる様に始まったのは、曲中の ♪ササッ、ササッ♪ と言う掛け声が耳に心地よい「夏至南風」。
そして最後はしっとりと「サキシマのテーマ」で、The SAKISHIMA meetingのステージは終了した。
The SAKISHIMA Meeting
Set List
- サキシマユニゾン〜ユーニンガイ
- TOME DOME
- 風ゆイヤリ
- アンターマナ
(With 寂空-JACK- from The Shamisenists) - 夏至南風
- サキシマのテーマ
Brand-New TRAD 2022
Photoライブレポート(後編)
沖縄 ミュージックタウン音市場「Brand-New TRAD 2022」Photoライブレポート(特集・後編)では、民謡クルセイダーズのステージ、そして出演者全員で行われたアンコールの様子をPhotoレポする。
https://onigirimedia.com/2022/05/20/brandnewtrad2022_photoreport2/
Behind the Scene
The SAKISHIMA meeting のステージにて、縦横無尽な「アンターマナ」セッションを披露した寂空-JACK-。
当日は、楽屋及びリハーサルにて入念に新良幸人と、やり取りをしていた。
https://onigirimedia.com/2022/05/20/brandnewtrad2022_photoreport2/