2023年10月17日 昨年に続き開催された「TOKYO 和 CHAOS (トウキョウ ワ カオス)」。ジャパニーズアート・ロックデュオ KAO=S(カオス)の川渕かおりと山切修二が中心となり、今年も総勢 11組・19名のミュージシャン / パフォーマーが出演した。今回のレポートでは出演者からの出演後コメント等も交えながら、写真を中心に2部構成でお届けする。(特集・後半)
Contents
TOKYO 和 CHAOS 2023
出演者+Set List
TOKYO 和 CHAOS 2023 レポート / 拡張する 和×モダンのエンタメショー(1)では、7曲目「CHAOS」までを、写真を中心に構成、お届けした。
レポート(2)では、詩吟ユニット xiè のメンバーであり、サウンドクリエイターのHagiが手掛けた8曲目の楽曲からアンコールまでを、出演者のコメントも交えながら紹介する。
会場は昨年に続き SHIBUYA PLEASURE PLEASURE。
出演者
- ジャパニーズアートロックデュオ
KAO=S - ソードパフォーマンスチーム
偉伝或~IDEAL~ - 和太鼓師
広純 - 津軽三味線
神井大治 - ドラム
菊嶋亮一 - ベース
神田智 - ダンス・パフォーマンス
五十嵐愛 - 俳優
慈五郎 - 篠笛
IZUMI - 詩吟ユニット
xiè - ダンス・パフォーマンス
暁矢薫
Set List
- 破邪剣舞+和太鼓
- 神音し
- 地割れ
- 桜香る (インストゥルメンタル)
- 黒田節 〜詩吟・名槍日本号〜 / xiè
~ MC - ねあん
- CHAOS
↑ここまでをレポート(1)で紹介
↓ここからをレポート(2)で紹介 - インストゥルメンタル曲 / Hagi
- アラバシャバサラダンカン / 広純
- MATSURI / 神井大治
~ MC - More Than Blue
- インプロヴィゼーション / 山切 × IZUMI
- 桜の鬼
- 結う
アンコール
- ラグナロク / 神井大治
- ZANGEKI LIGHTNING
- 桜香る
TOKYO 和 CHAOS 2023
レポート (2)
Photographed : 添田晃史 Akifumi Soeda
Text : Tomoko Davies-Tanaka
近未来 × 殺陣
TOKYO 和 CHAOS 2023 出演オファー時に、KAO=Sのギタリストであり、本イベントのプロデューサーでもある山切から、コラボ曲制作を提案されたと詩吟ユニット xiè のサウンドクリエーター Hagiは、自身のブログで明かしている。
以前より交流があり、KAO=S楽曲のアレンジなども手掛けるHagiだからこその提案とも言えるが、そのテーマは【SF映画の金字塔、リドリー・スコット監督による「ブレードランナー(1982年公開)」をモチーフにした近未来感のあるサウンド】だったとのこと。
ブレードランナーと言えば、日本をイメージした近未来都市をスグに思い浮かべる人もいるだろう。その世界観が TOKYO 和 CHAOS と馴染むことは、想像に難くない。
だが、しかし。実際のステージでどの様に演出されるのか… その答えが「近未来 × 殺陣」だった。
考えてみれば映画「ブレードランナー」は、脱走レプリカント(人造人間)達を見つけ出し抹殺する専任捜査官(ブレードランナー)と、反乱を起こして人間を殺害、逃走した哀しきレプリカント達の話である。
つまり、死と隣り合わせである「武士」達の生きざまとも共通する様な物語な訳で、「殺陣」と合わない訳がないのだ。
TOKYO 和 CHAOS 2023 のステージ上では、そんな「ブレードランナー」的世界観が、スピード感ある殺陣と、Hagiの壮大かつデジタルなサウンドで、見事に繰り広げられていた。
偉伝或~IDEAL~ より 宮園博之 / 伊勢参
偉伝或~IDEAL~ より 村尾敦史 / 森本拓也
Hagi / xiè
Hagi コメント
昨年は、客席から観ました。
Hagi / xiè
伝統的な雰囲気があるのに、古き良きモノというより『新しい和』のエンターテイメント!自分が参加する事で、この『新しい和』がさらにブラッシュアップできれば、、という思いは、ありました。
映画「ブレードランナー」をモチーフに近未来感のあるサウンドでステージを盛り上げる!というのは、山切さんのアイデアです。
近未来的なサウンドと殺陣、そして詩吟と邦楽器。ナイスなミスマッチ!面白かったです。これだな!!って思いました。『新しい和』のエンタメですからね!
こういう斬新な組み合わせで新しいモノを表現できるのが【TOKYO 和 CHAOS】そう思いました。
※より詳細なサウンドにまつわるコメントはHagi氏のブログにてお読み頂けます。
俳優 慈五郎 / 偉伝或~IDEAL~ より 宮園博之 / 伊勢参
慈五郎 コメント
川渕かおりさんとは昔から面識が有りましたが、こうしてがっつりご一緒するのは初めてでした。
慈五郎
対峙して感じた事は、この人は純粋で真っ直ぐ、表現が大好き・殺陣が大好き・人間が大好きな少年の様な(女性ですが)人なんだなと言う印象をとても感じました。
自分が小さい頃の好きな仲間と遊んだり冒険をしたりしていたヤンチャ坊主の時の感覚が蘇ってきました。本気で楽しい事や好き事にとことん向き合って生きていく!
【TOKYO 和 CHAOS】はそう言う志(こころざし)を持った方々が集まった、素晴らしいイベントだと思います。次回もお声がけ貰えるように私も精進です♪
風神雷神
デジタルなサウンド・スケープの後に繰り広げられたのは、正しくフィジカルの饗宴。
昨年も大喝采となったドラマー 菊嶋亮一 と和太鼓師 広純 による「アラバシャバサラダンカン」。曲は昨年と変わらなかったのだが、その演奏の進化に驚愕させられた。
様々なリズムが複雑に絡み合う楽曲にも関わらず「異なる音色だけれど響き合う・通じ合う演奏」を披露してくれたのだ。
「阿吽の呼吸」とは正にこの事と言った 見事なパフォーマンスだった。
和太鼓師 広純
ドラマー 菊嶋亮一
菊嶋亮一 コメント
和太鼓とのセッションは昨年と同じ曲ではあったのですが、「今年は何か進化させて演りたいよね」と、広純氏と事前に打ち合わせをして、今年は新たな展開を追加してバトルではなくユニゾンする場面を増やしました。
和太鼓は音量も音圧も凄いのでドラムの音量ではとても太刀打ちは出来ないのですが(笑) 戦うのではなく、共存するイメージで今年は臨めたのではないかと思います。対決が共闘に変わった感じですね。今年も素晴らしい出演者が揃うステージに関われて最高でした。また次回が楽しみです。
菊嶋亮一
広純 コメント
昨年のTOKTO 和 CHAOSで《ドラム×和太鼓》が大好評を賜り、KAO=Sより「本年も このシーンを是非」との事で、それならば私としてはアップデートして演りたかったので、ドラムのキクと話し合い、今回の結果となりました!
心技体…互いに全てを使うシーンなので、前日リハから気合い入れてバチバチに打ちました!公演を納めた後でも まだまだ演りたいし、キクと打ちまくりたいですね! 押忍
広純
火 / 陽の男
ドラムと和太鼓に割って入れる響きと言えば… それは三味線界でも随一の音のデカさを誇る津軽三味線。
神井大治が自身の曲「祭 ~MATURI~」と共に登場すると、ステージの上の空気感が一変するのも面白い。正に「陽の男」。
津軽三味線 神井大治
そして神井大治は、火の国 熊本出身「火の男」でもある。客席からの手拍子にあわせ、ドラマー 菊嶋亮一、和太鼓師 広純の生み出す熱く燃えるビートにのり、ロックな三味線サウンドを響かせた。
More than Blue
神井の「陽」の気により空気感が変わったステージに、再び登場した川渕が紹介したのは、和のテイストもありつつ、KAO=Sの楽曲の中でもポップなナンバーの「More Than Blue」。
この曲のオリジナルは、2011年より活動を休止しているバンド quaff によるもの。
2022年8月に出演したドイツの文化交流イベント「Main Matsuri Japan Festival」で、この曲と出会った事を川渕が紹介した。
ダンス・パフォーマンス 暁矢薫
ダンス・パフォーマンス 五十嵐愛
篠笛・フルート奏者 IZUMI
「More than Blue」に続いては、ギターの山切と IZUMIによるフルートのインプロビゼーション(即興演奏)が披露された。
急:桜の鬼
TOKYO 和 CHAOS も終盤。つまり曲や劇の構成上の3段階を表す「序破急」で言えば「急」となる。
13曲目に演奏されたのは、川渕の激しい剣舞でも知られるKAO=Sの代表曲「桜の鬼」だった。
山切が途中歌うが、歌詞はない本楽曲。川渕の身体表現により紡がれる物語は、ベースの構成は変わらないが、川渕いわく「毎回、込める意味や気持ちは異なる」とのこと。
暗闇の中から出てきた「魔」…と 思しき存在に、面を着けられ苦しみもがき、そして般若と一体になる川渕。彼女は今日、この曲に「何を」込めるのか…
戦争に自然災害、経済不況に未だ蔓延する差別。コロナ禍だって完全に終息した訳ではない。
世の中はギスギスし、流言飛語や心無い暴言がSNS上には氾濫している。
般若と一体となり、「闇」の中をさ迷いもがく川渕の姿は、現在の混迷する世界を表している様にも見える。
そして彼女は、心が折れたごとく舞台に沈む。
今回、通常の「桜の鬼」とは少し異なる演出があった。
いつもであれば荒い息づかいの中、川渕自身が見えない糸を自ら手繰り寄せるのだが、今回は「魔」と思しき存在として最初に登場した妖が、糸を手繰り寄せるのを手助けする様なシーンがあった。
これが意味するものは…
見えない糸を手繰り寄せ立ち上がった川渕は、一心不乱に刀で「何か」を切り裂いてゆく。いや「何か」を断つと言った方が良いのかも知れない。
迷い、不安、恐れ… 人の心に巣食う「魔」を断ち切る彼女の姿に、観客は毎回魅了される。
結う
本編最後の曲は、ドイツで毎年行われる「Main Matsuri Japan Festival」の為に、山切が作った「結う」。
出演者が1人1人登場し、全員で演奏/パフォーマンスをするエンディングに相応しい楽曲だ。
KAO=Sは開催初年度から、同イベントに出演。現在は演出も任されている。
川渕による大きなジャンプで、本編最後の楽曲「結う」は終了した。
アンコール
観客の拍手に押される様に、再びステージに現れた楽器隊の面々。
ここで山切が「CHAOSと言う名前だから、何をぶち込んでも大丈夫かなと思って、今日2回目を迎えたわけですが、ちょっと色んなものを集め過ぎた気もするんですが、皆さん楽しんでいらっしゃいますか⁈」と、改めての挨拶を行った。
アンコール1曲目に演奏されたのは、津軽三味線奏者 神井大治のオリジナル曲「ラグナロク」。
KAO=S以外の曲も、数曲ではあるがTOKYO 和 CHAOS 2023では取り入れられていた。
これは前回とは大きく異なる点であり、今回 世界観が大きく広がった事にも繋がったと思う。
神井大治 コメント
「祭 ~MATSURI~」 と「ラグナロク」は、山切さんや広純氏と和酒フェスや和楽器bar龍宮等で共演した事がきっかけで、今回この2曲を取り入れたいと山切さんから直々に提案がありました。
「祭 ~MATSURI~」では新しくドラムが加わり、打弦楽器の津軽三味線×和太鼓×ドラムの打楽器トリオコラボレーションを世界初披露!
神井大治
そして「ラグナロク」は、原曲がピアノメインのアレンジをギターで表現してもらった事で、これまた新しい世界観を演出する事が出来ました。
僕の楽曲をTOKYO 和 CHAOSの舞台に起用してもらえて、とても嬉しかったしありがたかったです。そしてまた演りたいです♪
哀愁漂う神井の楽曲「ラグナロク」に続いて披露されたのは、ソードパフォーマンスチーム 偉伝或~IDEAL~ の見事な殺陣が楽しめるKAO=Sの「ZANGEKI LIGHTNING」
偉伝或~IDEAL~ は、川渕と共に最後まで気合の入ったパフォーマンスを見せつけてくれた。
ここで会場から、薔薇の花を一輪 手にした少年が登場し、川渕に手渡した。
大きな笑顔で彼に応えると、彼女はアンコール最後の曲「桜香る」の前に次の様に挨拶をした。
世界では毎日、毎日、本当に色んな事が起きて、心を痛める事とか、小さなことでも『嬉しいなぁ、幸せだなぁ』と思う事とか、泣きたくなったり、悔しい事とか、人それぞれ沢山のことがあるかと思います。
川渕かおり
でも『大切なモノ』を大切と言って、会いたい人に、会いたい時に会いに行って。そう言う優しい尊い時間とかを共有できると、小さな幸せが積みあがっていくんじゃないかな と思います。
今日、ホントにこの夜を皆さんと共有出来て、幸せに思っています。ありがとうございます!
山切修二 コメント
TOKYO 和 CHAOSは、伝統文化演目が並ぶショウではなく、私達が色んな国をまわる中で感じた、海外の人から見た「日本のクール」はこういうものかな、、と思った要素を基準に、東京で集められる人達の個性で組み上げた音楽とパフォーマンスのライブショウです。
山切修二
昨年の開催で、演目の並べ方の基礎はできたと思うので、今回は演目毎にスターになれる華を持つ人達にお声がけして、より個性が立ったショウになったと思います。
お客様がSNSでコメントするにあたり、語彙力失って結局「とにかく、、良かった凄かった感動した」という感想になるのが理想です。構成は沢山考えつくので来年もまた演ります。
なお、今回レポートで使用した添田晃史氏 撮影 TOKYO 和 CHAOS 2023 の、更にたくさんの写真は KAO=S Facebook に掲載されている。
All photos by 添田晃史 Akifumi Soeda
Text : Tomoko Davies-Tanaka
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