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ライブレポート:KAO=S(カオス)、渋谷マウントレーニアホールでの1年ぶりのライブ「Unite in Chaos」を開催!

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日本刀を使ったパフォーマンスなど、和のテイストを盛り込んだアート・ロックバンドKAO=S(カオス)が、2019年12月19日にライブ「Unite in Chaos」を、渋谷マウントレーニアホールで開催した。

和楽器、中国、モンゴル、世界各国の様々な楽器や文化が混じりあう、 総勢10名による多様かつ迫力満載のライブを今回はレポートする。


1年ぶりの渋谷マウントレーニアホール

KAO=S(カオス)は、ゲーム「ファイナルファンタジー」等のモーションアクターや剣舞師として活躍している川渕かおりと、シンガー/ギタリストの山切修二の2人によるロック・ユニット。
 
これまでに、アジア・アメリカ・南米・オセアニア・ヨーロッパの10ヶ国17都市のフェスや国交イベントで演奏。CNN International の番組でも紹介されるなど、海外からも高い評価を得ているバンドだ。
 
特に、KAO=Sではボーカルも務める川渕かおりの日本刀を使った迫力ある剣舞は、多くの人の注目を集め、海外では LADY SAMURAI とも呼ばれている。

彼らは2011年に結成。三味線奏者・寂空を含めたトリオ・バンドとして活動していたが、2017年末に寂空が脱退。

2018年から2人組で活動を始めた矢先に、川渕が女優として出演していた舞台で負傷。左膝前十字靭帯断裂と言う大怪我を負ってしまう。

しかし、不屈の精神で負傷後すぐにニュージーランドで開催されたフェスに参加。その後も手術やリハビリを行いながら、ドイツの日本文化交流イベントにも出演。

昨年12月に渋谷マウントレーニアホールで開催された復活ライブの様子は、BS-TBSドキュメンタリー番組「ストイック女子」 でも紹介された。

あれから1年。2019年12月に、KAO=Sが再び渋谷マウントレーニアホールでライブを開催すると言う。どんな世界を見せてくれるのか?クリスマスのイルミネーションが煌めく渋谷の人混みをかき分けながら、筆者は会場に向かった。

剣舞と和太鼓による演舞。

青く照らし出されたステージに、最初に現れたのはゲスト・ミュージシャンの和太鼓師 広純。彼の打ち鳴らす太鼓の響きが、会場の空気を揺らす。

そこへ真紅の着物を羽織った川渕かおりが登場。 外の世界の喧騒を祓い、これから始まる宴の成功を祈る様に刀を振るった。

和太鼓師・広純、川渕かおり
All Photos by Tomohide Ono

ギター・サウンドが景色を一変。ロック・ナンバーでライブは幕を開けた。

静寂に包まれていた会場の空気を切り裂いたのは、山切によるアコースティック・ギターの響き。続くエレキ・ギターの唸りで景色は一変した。

羽織っていた着物をステージに投げ捨て、川渕が力強く「松明」を歌いだす。

2曲目はドラム、パーカッション、和太鼓と言う迫力のリズム隊に支えられた「地割れ」。

ドライブするベース、激しいギターのロックナンバーに合わせ、会場からも自然に手拍子が沸き起こる。

「地割れ」が終了し、和太鼓師の広純がステージ前に出て、一礼をして去って行く。

鬼神さながらの演奏姿とは異なる、どこか少年の様な姿に思わず会場から笑いがこぼれる中、川渕が「改めまして、こんばんは!」と挨拶を始めた。

昨年開催された同会場でのライブについて、彼女は「怪我をした後で、その時なりの完全復活でしたが、この1年でこの左足も成長を遂げました。またこの会場で皆さんとお会い出来て嬉く思っています」と語った。

そんなハッピーな気分を表す様に、3曲目に演奏されたのはポップなナンバー「舞夢」。ウェストコースト・サウンドの様な、乾いたエレキ・ギターの音色が心地よい楽曲だ。

ドイツ・マレーシア・内モンゴル

同期を用いたアーバン・オリエンタルなアレンジの新曲「タイム・アフター・タイム」が披露された後、荒廃した世界を想起させるSEに続いて、しっとりとしたパーカッションと川渕の語りが印象的な「ねあん」が演奏された。

一息つくように川渕がステージを去り、ギターの山切修二による改めての挨拶が始まる。

今年は後半にドイツ、マレーシアでイベントに出演。そして10月には中華人民共和国内モンゴル自治区通遼で開催された巨大フェス「China Dream Motor Vehicle Festival 」 にKAO=Sは出演した。

特集:KAO=Sメンバーによる特別ツアーレポート!CHINA DREAM in 中国・内モンゴル自治区2019年10月1~7日の1週間開に渡り、中華人民共和国内モンゴル自治区通遼で開催された巨大フェス「China Dream Motor Vehicle Festival 」に出演した日本のアートロック・バンドKAO=S(カオス)のリーダー山切修二氏による特別ツアーレポート!...

その時の様子を山切が話しながら、彼らに同行した馬頭琴奏者のセーンジャーをステージに呼び込む。

彼とは、KAO=Sのアルバム「AMRITA」での演奏がきっかけで知り合ったそうだ。

そして始まったのは、馬頭琴と和太鼓、パーカッション、アコースティックギターによる即興セッション。

広大な草原を駆け抜ける馬の群れを思い起こさせるような、力強い音風景が繰り広げられた後、流れる様に演奏されたのは、なんと「荒城の月」。

KAO=Sのステージでは、ロックなアレンジによる演奏がお馴染みだが、今回は山切のボーカルと馬頭琴の切ない音色が中心となったアレンジだ。

芭蕉の句にある「兵どもが夢の跡」の様な世界が繰り広げられる中、巫女さながらの衣装を身にまとった川渕が再び現れ、ライブ冒頭の気迫あふれる演舞とは異なった、何かを慰める様な刀の舞で演奏に華を添えた。

シアトリカルなステージへ

8曲目は新曲「アメノヌボコ」。この曲は、川渕がいつも身につけている矛(ホコ) の形のペンダントをデザインした那須勲氏の詩が基になっているそうだ。

「アメノヌボコ」とは、日本神話に登場する矛(ホコ)で、イザナギとイザナミが天浮橋(あめのうきはし)に立って、天沼矛(アメノヌボコ)で渾沌とした大地をかき混ぜ、矛から滴り落ちたものが積もって日本となったと言う、国産みを象徴する物だ 。

川渕による那須勲氏の詩の朗読、イザナギとイザナミの出会いを表す様な山切とのユニゾンによる歌声、和太鼓の力強い響きは原始日本を想い起させた。

バンド・メンバーが再びステージに登場し、ロックアレンジの「黒田節」を挟み、10曲目に披露されたのは「アメノヌボコ」のその後の話を連想させる「CHAOS」。

黒いドレスに身を包んだ川渕の情念、怒り、哀しみが詰まった鬼気迫る語りと、コーラスとフェイザーでエフェクトされたエレキ・ギターのサウンドが印象的だった。

桜の鬼

11曲目に「AMRITA」が演奏された後、登場したのは三味線奏者の神井大治

KAO=S結成時に作られ、演奏され続けている彼らの代表曲「桜の鬼」を次に演奏すると、川渕が話す。

以前のKAO=Sであれば「三味線」は重要なポジションを占めていただろう。

山切と川渕の体制となり、2人がコアとなりながら、外のミュージシャンやアーティスト達と有機的に結びつき、自分たちの世界を広げていくスタイルが確立したからこそ、今回はライブ後半になって三味線が登場すると言う形が実現できたのではないだろうか。

そう言う意味で「桜の鬼」は、彼らにとって原点でありながら、今の彼らを表す鏡の様な曲なのかもしれない。

この日の演奏では三味線だけではなく、二胡奏者Shinも曲後半に登場し、新たな姿を見せてくれた。

そしてライブは祝祭となった

メインステージ最後の曲は、ドイツ・フランクフルトで2018年より開催されている日独文化交流イベント「MAIN MATSURI」用に山切が作曲した「結う」。

今回のライブ・タイトル「Unite in Chaos」をも象徴する様なこの楽曲は、バンド、三味線、和太鼓、二胡により賑やかに演奏された。

サポートバンドメンバー:Bass 勝矢 匠 / Drums 菊嶋 亮一 / E. Guitar Okiya / Percussion SAMMY
 

「和」だけではなく 「輪」

アンコールで再びステージに登場した山切が、改めて観客に挨拶をする。

「女性が中心にいて、カオス(混沌)から新しいものを創り出す。それは当初からのコンセプトではあるけれど、結成から8年。紆余曲折を経て、様々な国で演奏をしてきた現在は、いわゆる「和」だけではなく「輪」「調和」「融合」、そう言った事を力強く発信していきたいと思っています。」と話すと、会場から大きな拍手が沸き起こった。

白のスーツに身を包んだ川渕がステージに姿を現し、披露されたのは新曲「KAGUYA」、そして川渕の語りと、山切とのユニゾンによる歌声が特徴的な「世界の朝」。アンコール最後はKAO=Sの定番曲である「桜香る」が演奏された。

All Photos by Tomohide Ono

同会場で開催された昨年のライブは、川渕かおりの怪我からの復帰を祝うライブだった。もちろん彼女が話したように「その時の完全復活」ではあった事は間違いない。

だがしかし、それから川渕の左足も、バンドも、様々な経験を経て、さらに力強く、さらに高く飛べる力をつけたようだ。

年明け1月はドイツで初の単独ホールライブを行うと言うKAO=S。これから彼らがどんな音、人、アートと結びつき、新たな世界を見せてくれるか、楽しみである。

Set List

プロローグ:和太鼓と剣舞
1曲目:松明
2曲目:地割れ
3曲目:舞夢
4曲目:タイム・アフター・タイム(新曲)
5曲目:ねあん
6曲目:馬頭琴とのセッション
7曲目:荒城の月 (カバー)
8曲目:アメノヌボコ(新曲)
9曲目:黒田節
10曲目:CHAOS
11曲目:AMRITA
12曲目:桜の鬼
13曲目:結う

アンコール
14曲目:KAGUYA(新曲)
15曲目:世界の朝
16曲目:桜香る

KAO=S Website

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おにぎり1号・Tomoko Davies-Tanaka
Onigiri Media メイン・ライター おにぎり1号こと Tomoko Davies-Tanaka (Team Little-Big) は、フリーランスPRエージェント。海外⇔国内、英語⇔日本語業務を中心に、スモールビジネスのPR業務のサポート他、コーディネーションやブッキングも行っています。 インタビュー記事 https://ledgeweb.com/740/