2020年2月15日 渋谷SPACE ODD にて、声優・太田彩華と彼女が率いるバンド太田家とのツーマンライブ「太田まつり」が開催された。
言ってしまえば「太田彩華」のワンマンライブではあるのだが、ソロ・アーティストとバンドの違いや、楽曲テイストの違い、スタンスの違い等があるのか否か。そんな事を考えながら、筆者は会場に足を運んだ。
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渋谷SPACE ODD
16時開場と、通常のライブよりは少し早めの時間にオープンした会場には多くのファンがつめかけ、グッズを購入したり、ステージ上で流されている太田家のインタビュー動画を見たりと、 思い思いの方法で時間を過ごしながら、今から始まるステージを待ちわびていた。
17時を少し過ぎたタイミングで、今日のライブの司会を務める鉄道芸人の太田トラベル氏がステージに登場。今から始まる太田彩華のライブに向けて「盛り上がってくれますか?」と呼びかけ、それに応える観客達。
ステージ上のスクリーンに「Let’s Enjoy!」の文字が映し出されると、大きな歓声が上がり、太田彩華のライブがスタートした。
声優・太田彩華ライブ
ハンドクラップ・サウンドがステージ上に鳴り響き、それに合わせて観客も手拍子を始めると、エメラルドグリーンのオフショル・ドレスを着た太田彩華が「みなさーん!こんばんは~」と元気よくステージに飛び出してきた。
「今日は楽しいライブにしましょう!」と言う掛け声とともに、アップテンポなポップナンバー「はじまりの手」がスタート。
♪手と手、手と手、手と手をかざす~♪と太田彩華が歌えば、フロアの観客達が彼女に向けて手を上げる。リズムに合わせて身体を揺らし、サビでは掛け声で応えるなど、1曲目から大盛り上がりのライブは、そのまま2曲目の「宵山で散って咲き誇れ」に流れ込む。
疾走感のある曲に合わせて、観客の掛け声も一層大きくなり、太田彩華そしてバックバンドのサウンドが加速する。
「このライブが始まる前に、76日前と言う微妙な数字の時からカウントダウンをしていたんですが、ドンドン近づいてくるのが感じられて、3日前とか震えてたんですけど、今日こうやって無事迎える事が出来て嬉しく思います!ありがとうございまーす!」と、 太田彩華が改めて挨拶とライブを迎えられた喜びをクチにした。
3曲目は、キラキラ感溢れるポップナンバー 「全員カンパイ PartyNight」。ステージ上のスクリーンにも、ミュージックビデオが映し出される。
4曲目は、太田彩華が祟ヶ淵ルクルート役の声を担当しているアプリゲーム「Q-bit」のエンディングテーマ曲でもある「月食のソワレ」。 曲間では Bassの佐々木ツヨシが紹介され、GuitarのERIAKがソロで激しいプレイを披露した。
PCゲーム「ヤンデレシリーズ」では、3キャラクター:後輩/先輩/妹役の声優を務めている太田彩華。「割と私、明るい性格だと自分では思っているんですけど、最近ヤンデレの役をやる事が多くて、とってもヤンデレにハマっています」と語る。
次の曲は、そのゲームの主題歌にもなっている「True or Bad Ending」。この楽曲の歌詞も太田彩華は手掛けている。
いつもは「青春!」と言った感じの曲が多いが、この曲はゲームの内容にかなり寄り添った「ダーク・サイド」な雰囲気で書かせてもらったとの事。
優し気なメロディから始まり、途中ワルツ的なパートもありつつ、サビはハードな展開と言う難しい曲を健気に、一生懸命に歌う太田彩華を見守る観客達。歌い切った彼女を大きな歓声が包み込んだ、
ソロ・ライブ最後は、彼女としても強い思い入れがあり、支えてくれるファンに対する感謝の想いが込められている「Eternal Birth」、そして声優としても古宮鏡花役を担当しているアプリゲーム 『NOeSIS 歌う影の戯曲』第3章エンディング曲「命の花」の2曲。
ドラマチックな楽曲でソロ・シンガー太田彩華のステージは幕を閉じた。
太田彩華ライブ・セットリスト
M1 はじまりの手
M2 宵山で散って咲き誇れ
M3 全員カンパイ PartyNight
M4 月食のソワレ
M5 True or Bad Ending
M6 Eternal Birth
M7 命の花
太田家ライブ…の前に大抽選会
太田彩華ソロ・ライブが終わり、続くバンド・太田家(おおたや)のライブ準備が行われる中、ステージ上には鉄道芸人の太田トラベル氏 が再び登場し、協賛してくれた様々な企業から提供された豪華景品の抽選会が行われた。
大いに盛り上がる抽選の様子を見ながら筆者は、会場内の一体感や、みんなでライブを盛り上げようと言う言葉にはならない雰囲気が、通常のライブとは一味違うなと感じていた。
バンド・太田家は、太田彩華(Ba/Vo)を筆頭に、メンバーの太田ERIKA様(Gt)、太田ひさおくん(Key)、太田たけちゃん(Dr)も、全員が太田姓を名乗っている。
さらに太田彩華及び太田家のメンバーは、観客の事を「親戚」と呼んでいる。つまり、オーディエンスもある意味「太田」さん。
こう言った設定は、他のバンドでもたまに見かけるが、世界観を共有する事で作り上げられる一体感とはまた違った連帯感を、今回のライブ会場では感じた。家族的な温かさとでも言ったら良いだろうか。
太田つながりで出演する太田トラベル氏とも自然に盛り上がる「親戚の太田さん」達を見ながら、そんな事を思っていた。
バンド・太田家ライブ
衣装を変えて登場した太田彩華の腕にはBassが抱えられている。そう、バンド・太田家では、太田彩華はベーシストでありボーカリストだ。
昨年8月にリリースした「星明かりのメロディ」で、太田家のライブはスタートした。疾走感のあるリズムをドラムが叩きだし、太田彩華もがむしゃらに、そのリズムに食らいついて行く。その勢いを止める事無く続いて演奏された2曲目は「どうせ僕らは」。
会場に集まった「親戚の太田さん」達も、全身でリズムを感じ、声を上げ、ステージ上のパフォーマンスに食らいついていく。
洗練されたメロディと、ドラマチックなアレンジ、透明感溢れる歌声で展開したソロ・ライブから一転し、ステージ&会場の雰囲気はまるで学生時代の部活の様だ。彼女のポテンシャルを信じ剛速球を投げるメンバー、投げられた球を必死で打ち返す太田彩華、それを大声で応援する親戚一同。そんな光景が思い浮かぶ。
2曲目が終了したところで「改めましてこんばんは~!太田家でーす!」と太田彩華が元気に挨拶。太田家としては今日が2020年最初のライブとの事。「昨年4月から約1年弱と短いながらも、ほぼほぼ毎月楽曲を配信するなど、かなり濃い1年弱を過ごしてきました」と話す。
バンドのメンバーを改めて紹介した後、会場の太田さん達と「太田家コール&レスポンス」を行った太田彩華は「太田家と一緒に青春を送ってくれますか~!」と叫んだ。大きな歓声で応えるフロアの太田さん達。
そんなやり取りの後に演奏されたのは、昨年12月より3か月連続でリリースされたレジェンドカバーシリーズの1曲目、↑THE HIGH-LOWS↓のカバー「青春」 だった。
続く4曲目はキーボードのひさおくんが弾く美しい旋律と、太田彩華の「行きつく未来がどんなに暗かろうと、幸せだろうと、あなたと見たいものがあるんだ」と言う語りから始まる「夢の散歩者」。
3連リズムが印象的なこの曲は、散歩と言うよりはマーチの様に、先のわからぬ道を歩く人の気持ちを照らしてくれそうだ。
ライブは今年初の太田家だが、年明けからレコーディングや取材等で多忙な日々を過ごしていたとの事。インタビューを通してメンバーのことを改めて知る事もあった様だ。
https://onigirimedia.com/2020/02/12/otaya2/
ドラムのたけちゃんは、小5の時にTUBEのCDを買いに行く為に電車に乗ったが、当時既に身長が170㎝くらいあり、駅員さんに「子供料金ムリでしょ」と怒られたと言う忘れられないエピソードをステージ上でも披露。
ギターのERIKA様が初めて買ったCDはモーニング娘、太田彩華は筋肉少女帯の「踊る赤ちゃん人間」と、音楽性が全く違うメンバーが集まってライブをしていると、太田彩華は楽しそうに話していた。
MCの後に演奏されたのは、レジェンドカバーシリーズ第3弾として2月1日に配信リリースされたばかりの「小さな恋の歌(MONGOL800カバー)」、そして6曲目に披露されたのは「名もなき少年の 名もなき青春」だった。
「名もなき少年の 名もなき青春」も含め、太田家のオリジナル曲は作曲をキーボードのひさおくん、歌詞は太田彩華が手掛けている事が多いとの事。
太田家には「文学的青春パンクバンド」と言うキャッチコピーが付いているが、これは太田彩華が文学好きだと言う事からも由来しており、歌詞や曲のタイトルにも、それは反映されているそうだ。
挨拶を挟み、バンド・太田家のメインステージ最後に演奏されたのは、 レジェンドカバーシリーズ第2弾として、2020年1月1日にリリースされた「卒業(ガガガSPカバー)」。感情を爆発させる様に歌い叫ぶ 太田彩華が印象的だった。
太田家ライブ・セットリスト
M1 星明かりのメロディ
M2 どうせ僕らは
M3 青春
M4 夢の散歩者
M5 小さな恋のうた
M6 名もなき少年の 名もなき青春
M7 卒業
アンコール
アンコールにはソロ・ライブのBass 佐々木ツヨシ氏も参加。太田家の新曲で、舞台「時空捜査局 ランティア」のエンディングテーマにもなった「愛とアストロノミア」が、まずは演奏された。
メインステージが終了した事でリラックスしたのか、メンバーとのトークも盛り上がる太田彩華。ドラムのたけちゃんが、面白くて太田彩華にも教えたと言う「能での鶏の鳴きまね」まで披露した。
最後は、太田彩華と太田家のツーマンライブと言う事で、太田彩華の曲「Fanfale ~僕たちの奇跡~」を太田家が演奏。全力で駆け抜けた約2時間の太田彩華&太田家のツーマンライブは、多くの太田さんの笑顔と共に終了した。
それが私たちの音楽
太田彩華と太田家のツーマンライブ。もちろん楽曲も異なれば、演奏のスタイルも異なるが、最も印象に残ったのは両ステージで頑張る太田彩華のひたむきさ、健気さ、一生懸命さだった。
ルックスの可愛らしさや、透明感ある歌声、少女の様な・少年の様な天真爛漫さ等々、彼女の魅力は色々あるだろう。だがしかし、彼女の最大の特徴は周りの眼など気にせず、ひたむきに自分の好きな事に打ち込む姿ではないだろうか。
「立ち止まってしまいそうなら手を引くし、一歩前に進みたいならそっと背中を押しましょう。 どんな季節も一緒に寄り添って歩きたい。いつもあなたの側にある愛読書の様に。それが私たちの音楽です。
汗をかいてあがく事が恥ずかしい事ではない。愛しいなら、切ないなら、悔しいなら、 叫ぼう。私たちはそうやって一生青春して生きて行こう。今日は本当にありがとうございました」
アンコール前の挨拶で彼女が語った言葉だ。相手を思いやり、寄り添い、自分の信じる事を全力で追い求める。そんな太田彩華の姿や、彼女が発信する音楽が、会場に居た全・太田さんをも勇気づけているのではないだろうか と感じたライブだった。
今年秋口には太田家としてアルバムをリリースする予定と、今回のライブで発表となった。これからの太田彩華、そして太田家からは、まだまだ眼が離せそうにもない。