2021年12月15日~12月26日まで浅草九劇で上演するオフ・ブロードウェイ ミュージカル 『キッド・ヴィクトリー』(生配信あり)。同作に出演する木村花代と吉沢梨絵の対談が届いた。「ひとすじ縄ではいかないミュージカル と格闘中です」と話す、彼女達の言葉から垣間見える作品の魅力をご紹介する。
Contents
キッド・ヴィクトリー
オフ・ブロードウェイ ミュージカル「キッド・ヴィクトリー」 は、『シカゴ』や『キャバレー』で知られる作曲家 ジョン・カンダーと脚本家 グレッグ・ピアースのタッグで執筆された作品。
あらすじ
アメリカ カンザス州の小さな町に、両親と暮らす高校生のルーカス。
1年間行方不明となっていた彼は家に戻って来るが、行方不明中、自身に降りかかった出来事のフラッシュバックに苦しみ、日常生活に戻れずにいた。忘れることの出来ない経験、心に負った深い傷。
彼はどう日常を取り戻していくのか、どう生きていくのか。ルーカスと両親、彼をとりまく人々の物語。
Website
https://www.9geki-stage.com/
公演概要
- タイトル
キッド・ヴィクトリー - 作詞・脚本
グレッグ・ピアース - 作曲・脚本
ジョン・カンダ―
(代表作『シカゴ』『キャバレー』『蜘蛛女のキス』) - 公演日程
2021年12月15日(水) ~12月26日(日) - 会場
浅草九劇 - チケット料金
全席指定 8000円 - チケット取扱い
- チケットぴあ
https://w.pia.jp/t/kid-victory/ - カンフェティ
https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=64377& - オンライン生配信
- 2021年12月25日(土)
17:00<EAST> - 2021年12月26日(日)
13:00<WEST> - 配信チケット
1公演 3,500円(税込)
※アーカイブ配信はございません。 - 配信チケット取扱い
https://live.paskip.jp/ticket?bcid=_aD3XqHjWgZTACtXHICDxQ - チケット詳細
https://www.9geki-stage.com/ticket - 感染症対策
https://asakusa-kokono.com/kyugeki/news/2020/06/id-8687
キャスト 他
- 演出
奥山寛 - 出演
- EAST:碧直生、森田浩平、木村花代、上野聖太、塚本直、遠藤瑠美子、丹宗立峰、田中なずな、小原汰武
- WEST:坂口湧久、ひのあらた、尹嬉淑、港幸樹、吉沢梨絵、真記子、小林タカ鹿、井上花菜、岡施孜
木村花代
吉沢梨絵対談
少年と周囲の人々の織りなす繊細なドラマを、ミュージカルという手法で描き出した「キッド・ヴィクトリー」に挑む「EAST」「WEST」2チーム。
「EAST」チームで主人公の母を演じるのが木村花代。そして「WEST」チームで主人公が働く店の主エミリーを演じるのが吉沢梨絵。
同時期に劇団四季で数々のヒロインを演じ、退団後も様々な作品で活躍中のお2人。在団中の互いの印象から俳優として劇団で得たもの、そして「キッド・ヴィクトリー」で演じるそれぞれの役柄や作品の魅力について、話を伺った。
観た後に
きっと語り合いたくなる作品
――お2人は劇団四季ではどれくらいご一緒だったのですか?
木村花代(以下・木村):私は2010年まで13年間在団していました。
吉沢梨絵(以下・吉沢):私は2009年までの7年間。花代さんには『マンマ・ミーア!』でデビューした時からずっとお世話になっていました。でも不思議なことに、共演したことはほとんどなくて…
木村:『コーラスライン』で、一回か二回だけですよね。基本的には同じ役を勉強することが多くて、絡むことはあまりなかったんです。
――お互い、どんなイメージでしたか?
木村:吉沢さんは歌手だったので、『マンマ~』のオーディションの時のプロフィール写真が凄くて(笑)。
浅利(慶太)先生がぼそっと「あの子、面白いな」とおっしゃったのをよく覚えてます。諸先輩方にも「いいね」と言われて、褒められてどんどん伸びていった印象です。
吉沢:私は劇団というものがどういう場かよくわからないまま入って、皆さんに本当によくしていただきました。ロングランは体力的に大変で、気が付けば先輩方が腕をマッサージしてくださったり。
花さんは、堅実な方の多い劇団の中でキラキラ輝いている人の多い「花の35期」のお一人で、この劇団にもアイドルみたいな方がいらっしゃるんだ!というのが第一印象でした。でも同じ役を稽古するうち「この方は外見と全然違う」と気が付いて…。
木村:自分のことで精いっぱいで、他の人と交流する余裕が無かったから異色に見えていたのかも。
吉沢:美しいファルセット(裏声)も当初は出なかったと聞いて、この方は努力の方なんだとわかって、すごく尊敬しています。
――同じ役を稽古することが多かったというのは、共通項があったということでしょうか。
吉沢:私はボーイッシュだったり子供っぽい役をいただくことが多かったけど、花さんはそういう役もやれば、全然違うタイプの役も演じて、オールマイティな方でした。
どの役もやれちゃうので、大変だったんじゃないかな。今、この枠の俳優が少ないから花代入れ、みたいに。
木村:それは…ありましたね(笑)。でも私たちは持ちつ持たれつで、私が怒られたときは彼女がさっとサポートに入ってくれたり。
吉沢:そんなことありましたっけ⁈
木村:目まぐるしくいろいろなことがありましたから(笑)。『コーラスライン』では、彼女はもともと踊りの経験が無かったのに、本当に努力して、怪我しちゃうんじゃないかというくらい稽古してました。
吉沢:劇団四季は「その先に行かせてくれる場所」でしたね。やったことのなかったダンスもできるようになったことで、今、出来ないことに対しても「これはやってみろという運命なのかな」と受け入れられるようになりました。
木村:あと、お互いの存在が励みになっています。公演告知の中に彼女の名前があれば「これに出るんだ、私も頑張ろう」と思えます。
キッド・ヴィクトリー
――そんなお二人が今回取り組む『キッド・ヴィクトリー』ですが、まず台本を読んでの印象は?
吉沢:はじめは難しかったけれど、何度も読んでいくうちに一つ一つの台詞に意味があることが見え、面白くなってきました。
木村:空気感としては全然明るくないんだけど、その中に希望が見えてほっとする瞬間があるんです。俳優の呼吸感や細かい表情、ニュアンスがダイレクトに伝わる浅草九劇にぴったりなので、その強みを生かしてできる、繊細なお芝居だなと感じました。
――お二人が演じるのは、保守的な母親と自由奔放なバイト先の店主という、ある種対照的な女性ですね。
木村:わたし的には今まで演じたことのない母親像です。信仰心が篤くて、ちょっと普通のお母さんじゃないのだけど、台本には細かくは書かれていない。
でもそれをバックグラウンドとして持っていないと、ただの悪いお母さんに見えてしまうんです。この作品ではいろんな人がそれぞれに傷を負っていて、沼地を一生懸命歩いているようなイメージなので、それが乾いた大地にならないように。稽古でもう一段深みが出せるといいなと思っています。
吉沢:私が演じるのは、(家庭でどこか居心地悪さを感じている)ルーカスにとって、心の許せる友人。はじめはなぜ「年の離れた」設定なんだろう、と思いました。
今の時点で思っているのは、自由に見える人にも傷や悲しみはあって、その部分でルーカスと共鳴しあえたということなのかな。
自分の子供のような年齢のルーカスに対して、助けてあげたいけれど自分も苦しい…というナンバーがあるのですが、これはこういう意味だな、というのが最近見つかったので、まだまだ探求の余地がありそうです。
木村:稽古では「いいところまで来た」と演出家に言われていますが、噛めば噛むほど味が出てくるので、初日までにどこまでしみこませられるかな、開幕後も変化していくかな、と楽しみです。
吉沢:単純な話ではないんですよ。はじめ、ルーカスがただただかわいそうなのですが、途中で「あれ?」と思えるところもあって。演出家とも話し合っていますが「人間とは多面的なものだよ、人生とは繊細なものだよ」といったことを表現しているのかな、と考えています。
WEST/EAST
――ご自身のチームはどんなカラーですか?
吉沢:WESTチームは「大人」が多いかな。ルーカス役のわっくん(坂口湧久さん)は達観していてびっくり。若いキャストをベテランがケア…という感じではないです。
木村:EASTチームは逆かな。ルーカスって出っ放しの役なので、稽古が始まる前にみんなで「(小道具の)お水持った?携帯持った?」と声をかけています。あと「天然」なキャストが多くて、楽しいですよ。
――どんな方に観てほしいですか?
木村:多面的な作品なので、もちろん思春期世代もルーカスの目線で共感できると思うし、親世代も、それ以外の方もどこかに共感できると思います。
吉沢:一筋縄でいかない脚本なので、ミュージカル・ファンだけでなく、演劇好きな方にもトライしていただきたいです。我々は一生懸命やるので、観終わったらどう感じたかうかがいたいですね。
木村:人の数だけ意見が出てくるような気がします。
――どんな舞台になればと思っていますか?
吉沢:ルーカスはどう成長して、最後にどんな余韻が残るのか、きっとチームごとに違う印象を受けると思いますが、お客様が「なるほどね」と思っていただけるような幕切れになるよう、劇中の積み重ねを丁寧にやっていきたいです。
木村:私も2組で印象は違うと思います。どちらも観ていただくと、全然違う解釈が出来るかもしれません。別チームも観てみたいな、と思っていただける舞台に出来ればと思っています。
取材・文/撮影:松島 まり乃