伝統音楽の最新型を紹介するイベント Brand-New TRAD 2022が、沖縄本土復帰50年目を迎える前夜 2022年5月14日に、沖縄市にあるMusic Town 音市場にて開催される。
今回Onigiri Mediaでは、このイベントに出演するTHE SAKISHIMA meetingの新良幸人と、The Shamisenistsの寂空-JACK-によるオンライン対談を実施。アツくて、深くて、ワクワクする2人のやり取りの全てを前後編にてご紹介する。(後編)
Contents
新良幸人 × 寂空-JACK-
対談・前編
三弦奏者 新良幸人 × 津軽三味線奏者 寂空 -JACK- 対談・前編では、三弦奏者、津軽三味線奏者同士、共通する悩みや、違い、音や演奏の魅力について盛り上がる2人の様子をお届けした。
https://onigirimedia.com/2022/05/03/arayukito_jack1/
対談・後編では、新良幸人氏の音楽的背景や、津軽三味線と三弦の違い、そして5月14日開催 The Shamisenists、THE SAKISHIMA meeting(新良幸人×下地イサム)、民謡クルセイダーズが出演する伝統音楽の最新型を紹介するイベント Brand-New TRAD 2022 に対する意気込みなどについて語ってもらった。
新良幸人 × 寂空-JACK-
Special Interview 後編
新良幸人 × 寂空-JACK- 対談・後編。
2人の話が盛り上がってきたところで、寂空-JACK-から新良氏に彼の音楽的背景についての質問が飛び出した。
演奏に影響を与えた音楽的背景
「ビッグバンドでこう言うのやるから、お前コッチにきて32小節アドリブ演奏しな」とか。で、「32小節って何ですか」って聞いたら「コレは4拍子だから、それを32回しなさい」って言われて、それ32回ってどうやって数えたらいいんだって言う(笑)
そこでキー(音階/調)の感覚とか、コードがFだけどFだと面白くないから、別の親戚のキーの方が三弦だったらアドリブで面白いって言うのを、自分の感覚の中で少しづつ覚えて言ったんですよ。
新良:だから、たまに「次のコードに行く感じで(コード感で)動いてるじゃないですか」って言われるけれども、それは全然意識してなくて、何回も何回もこうだろと思って弾いて、失敗したりしながら、なんとなく覚えたんじゃないかな。
で、そんな中で間違っても、ジャズの人たちだから、俺は真面目にやってるのにワザとスケールアウトしたみたいに思われたりして。
※スケールアウトはジャズの演奏テクニックの1つ。
参考リンク https://www.jazzguitarstyle.com/out-on-maj7(jazz guitar style master)
だから鍛えられたと言うよりかは、凄く可愛がってもらえて…。「良いんだよ」って言ってくれたのはジャズの人たちでしたね。
新良:彼らはジャズを良く知っていて、でも沖縄民謡の事も良く良く知っている人達なので「自分達も沖縄音楽のこともしたいな」って気持ちもあったろうし、でもなかなかできない中で俺みたいのと会って、だから可愛がってくれたのってもあると思いますよ。
津軽三味線と三弦の違い
ーー対談の前半で新良さんから津軽三味線と三弦は、音の伸び(サステイン)や演奏方法が違うと言ったお話がありましたが、寂空-JACK-さんはどう思いますか?例えば沖縄と津軽の環境の違いによっての、演奏方法の違いとかってあったりするんでしょうか?
JACK:そうですね、高橋竹山(たかはしちくざん)さんもそうだったって事ですけど、家々を回りながら玄関先で演奏してその日の稼ぎを得るって言う 門付芸人(かどづけげいにん/かどづけ) が津軽三味線のルーツにあるんで、外でいかに派手な音を出して、速弾きをして注目を集めるかって言うのが背景にあるのと、あとは気温ですよね。
やっぱり雪国なので、ゆったり弾く三線とは違って速弾きになったのは、冗談みたいですけど、気温が関係してるってのを噂では聞いたことがあります。
ーー寒いから、早く指や手を動かさないと凍っちゃうとか、動かなくなっちゃうとかって言うのもあったんですかね。そう言う「派手で速弾き」が特徴の津軽三味線について、前半でも少し話されていましたけど、新良さんはどう思われますか?
新良:若い頃、竹山さんのライブに通ったんですけど「凄く違うけど、凄く似てるな」と思ったんですよね。
極端に北と南って離れているけれど… 皆が幸せだと思ってる漠然としたベクトルみたいなのがあるじゃないですか。そう言う感じで一緒だなって言う… 凄く違うけど、凄く一緒だなった思ったんですよ。
伝統芸能って思われたらおしまい
新良:いや、あの、どっかでは「伝統芸能って呼ばれたら、もうおしまい」って思ってる部分があって「いやいや、お前らが伝統芸能って勝手に決めるな」と。
それこそ何百年もの間に淘汰された曲の方が多いわけだし、歌い継がれているって事は「永遠のヒット曲」だと俺は思っていて、それは皆が守るべきものと思って演奏している訳じゃなくて、皆がいまだに好きで、何百年経っても好きだから弾いてる、凄く良い楽曲だからやってるだけの話なんだよね。
Brand-New TRAD 2022
ーー凄く深くて良いお話が続いてますが、新良幸人さんと下地イサムさんのTHE SAKISHIMA meetingと、寂空-JACK-さん率いるThe Shamisenists、それから民謡クルセイダーズが出演するイベント 「Brand-New TRAD 2022 」が5月14日に開催されますが、どんな演奏をしたいなとかって想いはありますか?
JACK:そうですね、今まで僕たちがYouTubeにアップしたり、リリースした楽曲とは、この2年で僕も感じる事が変わってきて、作っている楽曲とかも違ってきている部分もあるので、「あ、The Shamisenists こう言う感じの雰囲気もあるんだ」って言うのを、新良さんとか、色んな人に感じてもらえたら嬉しいなと思いますね。
あとは、コロナ禍で人との距離を取らざるを得ない状況が続いてますけど、ステージ上でも津軽三味線と三弦と会話の様な瞬間があったり、ステージとフロアとの、お客さんとの実際の会話じゃなくても想いが通じる瞬間があったり、あとは楽屋での会話があったり、僕の中では「会話」って言うのがキーワードでして、そう言うことを大事にしながら、沖縄の空気をゆったり感じて演奏をしたいなって想いがあります。
新良:この3組でよかったなって思える形になればいいなって思うね。
3組が単純に集まって、ワーっと盛り上がるって言うだけのイベントじゃなくて、楽屋でみんなイイ顔して「またどっかで会おう」って形のライブが出来たら、それが一番素敵じゃないかなって。
「また一緒にどっかでやりたいね」って思う様な、それでまた必ずどっかでやるって言う。好きな事を好きなように歌って、楽屋でも小っちゃいドラマがあるみたいな感じになればいいなって。
5月14日開催
Brand-New TRAD 2022
Brand-New TRAD 2022は、沖縄市にあるMusic Town 音市場で開催されるが、配信ライブも実施される。
日本と沖縄の伝統音楽に、新たなアプローチで挑戦する3組のアーティストが競演する本イベントは、2022年5月14日開催。来場/配信チケット共に現在好評発売中だ。
詳しくは以下リンク、またはOnigiri Media記事にてご確認下さい。
音市場 Brand-New TRAD 2022
https://www.otoichiba.jp/event/brandnewtrad2022/
https://onigirimedia.com/2022/03/04/brand-new-trad-2022/
The Shamisenists
5月13日 那覇市ライブ
The Shamisenistsは那覇市にあるSound M’sでも、2022年5月13日にライブを行う。ゲストは、沖縄市生まれのシンガーソングライター 福田八直幸(ふくだやすゆき)。
詳しくは以下記事またはSound M’s Websiteにてチェック頂きたい。
Sound M’s
https://soundms.okinawa.jp/live_schedule/the-shamisenists/
https://onigirimedia.com/2022/04/16/theshamisenists_nahacalling/
プロフィール
新良幸人
1967年沖縄県石垣市白保生まれ。11歳から八重山民謡を父親(新良幸永)に師事。17歳で八重山古典音楽コンクール最高賞を受賞。18歳より大学進学のため石垣を離れ現在も那覇在住である。
現在はパーシャクラブやアコースティック・パーシャのヴォーカル&三弦奏者として、また同じパーシャクラブの太鼓・仲宗根哲(サンデー)と2人での活動も平行して行う。
シングル「ファムレウタ」はTBS 系「筑紫哲也ニュース23」のエンディング曲に起用。2003 年11月にはソロアルバム「月虹(げっこう)」を発表。
2011年10月にはテイチク・タクミノートよりピアニスト・サトウユウ子とのコラボレーションアルバム『浄夜』 をリリース。
モントリオール国際映画祭で2冠を受賞した映画『カラカラ』(2013年1月 全国公開)で音楽監督を担当。その他、下地イサムとのユニット・THE SAKISHIMA meetingや角松敏生、coba、夏川りみ、犬山イヌコ等のアルバムにも参加しその活躍も多方面に拡かっている。
Website
https://yukito.arize.jp/
寂空 -JACK-
寂空-JACK-が率いるThe Shamisenists(ザ・シャミセニスト)は、リード三味線、ベース三味線、ドラムから成る東京を拠点とした日本のオルタナティブ・三味線・ロックバンド。
エフェクターを駆使した新世代の三味線サウンドを追求し続け、独自路線を突き進む寂空-JACK-を筆頭に、「歌心」と 「和太鼓で鍛えた優れたリズム感」を兼ね備えバンドでは史上初のベース三味線を担当するYUJI、あらゆるジャンルにおいてハイクオリティーなドラミングを魅せ、バンドでもフロントマン顔負けのパフォーマンスを魅せるKYOHEIの3人が、圧巻のライブと楽曲の世界感で、「ニホンのイマ」、「トーキョーのイマ」を世界へ向けてかき鳴らす。
2021年、アメリカ・コロラド州・デンバーの音楽レーベル「COLOR RED(カラーレッド)」主催のオーディション「COLOR RED CHALLENGE ワールド デビュー オーディション」にて優勝し世界デビューが決定。
現在、『COLOR RED』でリリース予定のワールド・デビューアルバム制作前に、日本での活動の集大成となるアルバムを制作する為のクラウドファンディング「ザ・シャミセニスト日本制作アルバム応援プロジェクト」を実施中。
Website
https://www.transist.site/the-shamisenists