“映画を語る”配信番組「活弁シネマ倶楽部」2021年10月30日配信回は、2021年カンヌ国際映画祭において、日本映画 史上初となる脚本賞受賞を果たした『ドライブ・マイ・カー』について語り尽くす会。
MCは映画評論家の森直人。レギュラーメンバーである映画ライター・月永理絵、映画ジャーナリスト・徐昊辰、さらにゲストとして映画評論家の轟夕起夫が参加している。
映画『ドライブ・マイ・カー』
本作は、作家・村上春樹による珠玉の短編小説集『女のいない男たち』に収録されている『ドライブ・マイ・カー』を、『ハッピーアワー』や『寝ても覚めても』などの作品が国内外で高い評価を得てきた鬼才・濱口竜介監督が映画化したもの。
カンヌでは脚本賞のみならず、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の独立賞も受賞し、“4冠獲得”という偉業を果たした作品。
俳優で演出家でもある1人の男が、自身の中にある大きな喪失感に向き合い再生していくさまが、179分間にわたって描かれている。
主人公を演じるのは、テレビドラマへの出演も続く西島秀俊。テレビで見る彼とはまた違う、映画館のスクリーンだからこそヒリヒリと伝わってくる、言葉少なに表情で語る演技が趣深い。
そんな彼の周りを、三浦透子、岡田将生、霧島れいからが固め、強力な布陣となっている。
映画『ドライブ・マイ・カー』
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あらすじ
舞台俳優であり演出家の家福は、愛する妻の音と満ち足りた日々を送っていた。しかし、音は秘密を残して突然この世からいなくなってしまうーー。
2年後、広島での演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去をもつ寡黙な専属ドライバーのみさきと出会う。さらに、かつて音から紹介された俳優・高槻の姿をオーディションで見つけるが……。
出演者 他
活弁シネマ倶楽部
トークは本作への感想を述べるところからスタート。
トップバッターの 映画ライター 月永理絵は「ここまで大きな物語を、1本の映画にできたというのがすごい。まずはその驚きがありました。そして、濱口さんの映画を同時代に観てきた人間として、何かやっぱり一つの集大成を観ることができた驚き。この二つの驚きがありました」と語る。
続いて映画評論家の轟夕起夫は、「村上春樹作品を映画化したものって、どれも好きなんです。例えば、『風の歌を聴け』はあの時代感を収めていますしね。この『ドライブ・マイ・カー』に関しては、濱口監督が原作を自分の側に引きつけて、撮っている印象があります。村上作品らしさを飲み込んで、咀嚼して、自分のカラーに染め上げたうえで、出している」と本作を評している。
映画ジャーナリスト 徐昊辰は、「濱口さんの作品であり、村上春樹作品を扱っていて、そのうえチェーホフが入りこんでくる。この3つが揃っている時点で、相当ハードルは高いですよね。でも、非常に楽しい映画体験でした。あと、個人的に触れたいのはロケ場所です。瀬戸内が大好きなのですが、この映画は“いまの瀬戸内”の持つ意味が、そのまま収められているように感じました。車が舞台の一つでもあるので、観客も中に入って一緒に体験できる映画だなと思います」と語っている。
そしてMCである映画評論家の森直人は、「ある種、飲み込みやすい作品だと思って最初に観た際は、“濱口節全開”だということにまずビビりました。でも最近2回目を観たら、印象が違ったんです。すっきり観れた。つまり、1回目は“作家映画”、2回目は“商業映画”として観たんです。これができる作品だというのがすごいなと。そしてこの作家性と商業性を繋ぐのは何かというと、やはりチェーホフなんですよね」と自身の考えを述べている。
このトークでは本作だけでなく、濱口監督の過去作への言及や、ジョン・カサヴェテスにハワード・ホークス、増村保造など、監督が影響を受けてきた存在へも話は及んでいる。『ドライブ・マイ・カー』の鑑賞後の興奮と感動がよみがえってくる、そんな収録回だ。
カンヌ国際映画祭4冠
『ドライブ・マイ・カー』
徹底解剖
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