亜無亜危異(アナーキー)、hide、BUCK-TICK、LUNA SEA、THE BLUE HEARTS、THE MAD CAPSULE MARKET’S、DJ KRUSH、MUCC、人間椅子など数多くのロック・アーティストのアートワークを手掛けるアートディレクター サカグチケン。
今回は彼のプロフィールや足跡に焦点を当ててご紹介する。
Contents
サカグチケン プロフィール
1964年・香川県生まれ。
高松工芸高校デザイン科を卒業後、イトキン、アサヒビール、日産自動車、アップルコンピュータ ジャパンなど、数多くの企業広告のアートディレクション、デザインに携わる。
1987年、亜無亜危異(アナーキー)・仲野茂をモチーフにピースポスターを制作、世界平和ポスター展に出展。NEW YORK ADC国際展に3度入選するなど、海外でも広く作品が紹介されている。
数多くのアートディレクションを手がける他、雑誌「ダ・ヴィンチ」の表紙や、舞台美術、MV撮影・監督も行っている。90年にサカグチケン・ファクトリーを設立。
亜無亜危異、hide、BUCK-TICK、LUNA SEA、THE BLUE HEARTS、THE MAD CAPSULE MARKET’S、DJ KRUSH、MUCC、人間椅子など数多くのアーティストのアートワーク等を手掛ける。
なお、サカグチケンのジャケット・デザインは、最新作含め ジャケットデザインドットコムで閲覧する事が出来る。
アートディレクター とは?
アートディレクター または アートディレクション。音楽やアート系のメディアでは割と目にする言葉だと思うが、具体的にナニをしているのか理解しているのか?と聞かれたら、微妙なワードではないだろうか。
サカグチ氏は、その問いに「アートディレクターは、アートにおける映画監督だよ」とシンプルに答えてくれた。
映画監督と言えば、基本的には映画を制作する場での全てを決定する人だ。となると、アートを制作する場での全てを決定する人、それがアートディレクターとなる。
なんとなくイメージは掴めたが、より具体的に理解できたのは、サカグチ氏が話してくれた、彼が手掛けた広告制作のエピソードによってだった。
アップルコンピュータ
『マッキントッシュ』
サカグチ氏は、80年代に発売されたアップルコンピュータ―『マッキントッシュ』の日本での広告制作も手掛けている。
この広告は、国立競技場のスタンドにアップルのコンピューターを持った国際色豊かな人々を100人くらい立たせて、それを望遠カメラで撮影した写真を使った広告だったそうだ。
今ならば、デジタルカメラやドローンを使い、割と簡単に撮影できるかもしれないが、80年代の事だから、まだフィルムで写真を撮影している時代である。簡単な事ではなかっただろう。
この時サカグチ氏は、まず絵コンテを描き、クライアントに広告イメージを提案し、撮影するのに最適なカメラマンを選び、撮影の全てを指示し、出来上がった写真に載せるロゴや文字の配置位置を考え、最終的な形に仕上げるまでの全ての行程に関わり、決めたそうだ。
なるほど、確かに制作する広告アートの全てを決定する人=アートディレクターの仕事とは、そう言う事なんだと理解できるエピソードだった。
Rock of Ages
日本の80年代~90年代は、ロックが世の中に広く認知され、巨大化していった時代でもあった。
その理由のひとつとして、音楽再生メディアの主流がレコードからCDに移り変わり、それと同時に再生機器も、それまでは一般家庭の居間などにデデーンと設置されていた高価なオーディオ機器から、音楽が手軽に楽しめるポータブルな機器に変わっていった事も挙げられるだろう。
親に怒られず、誰もが自由に自分の部屋で ロックを聴けるようになった時代。
そんな時代にサカグチ氏は数多くのロック・アーティストの、アルバム等のアートワークを手掛けた。
その時の様々なアーティストとの交流や、エピソード、サカグチ氏が見てきたロックが巨大化していく様子は、時代の熱を感じさせる本当に興味深い内容だった。
これについては、とても1回ではまとめきれないので、次回以降詳しく紹介したいと思う。ぜひご期待頂きたい。
レコード・CD・配信
数多くのアーティスト達の、アルバムジャケット等のアートワークも手掛けてきたサカグチ氏。
レコード、CDの時代を経て、現在は配信による楽曲リリースがメインとなってきているが、手に取れる物から、デジタル・デバイスで表示されるのみ、かつ表示サイズが非常に小さくなっているアートワークの現在について、どう考えているのか?聞いてみた。
すると非常にシンプルで明快な答えが返ってきた。
「小さくても目立たないとね。3cm角・2cm角になっても目立つジャケットを、僕は目指してます。」
人間椅子名作選 三十周年記念ベスト盤
サカグチ氏は、2019年12月にリリースされた「人間椅子名作選 三十周年記念ベスト盤」のアートワークも手掛けている。
今作は2枚組かつ、現在海外からもアツイ注目を集める人間椅子らしく、全曲歌詞が英訳付きとなっており、彼らの独特の世界観を作り上げている歌詞を、全世界のファンに堪能してもらえる仕上がりになっている。
因みに、このアルバムには記念手拭いの付いた初回・限定盤もあるが、この手拭いもサカグチ氏がデザインを手掛けており、さらにAmazonのみの販売ではあるが、両面デカジャケット付と言うバージョンもある。
これらCDは聴くためはモチロンだが、コレクション・アイテムとしてもリリースされていると考える事が出来るだろう。
とは言え聴くためだけならば、現在の主流は配信であり、そう言った時代の流れに併せてデザインする事が大事だとサカグチ氏は言う。
「人間椅子のアルバムジャケットは、僕が撮影した月なんですよ、僕が携帯で撮影した。それを和嶋くん(人間椅子・ギター)に打ち合わせの時に見せて、『これイイでしょ』『お、いいねぇ、色とか変えられる?』と言う感じで決まったんだよね。
確かに大掛かりなセットを組んで撮影をする様な、アートワークに予算をかけても良かった時代もあったし、そう言う時代がまた来て欲しいとも思うけど、今はそう言う時代じゃない。
普段撮ったスナップ・ショットでも、それがかっこ良かったら、それを使えば良いと思うし、今はそう言う時代。
逆に言えば 携帯で写真は誰でも撮れる。けど、それを如何にカッコよくするか?が大事 だと思う」
ロックをデザインする男
ジャケットのアート・ワークは配信のみならず、CDやレコードをリリースする場合は、そちらでも使われるが、サカグチ氏はメディアによってデザインを変える事はないと言う。
さらに例えばレコード店のポップやポスター、アーティスト・グッズ等にも、それらのアートワークは使用されるが、どんなメディアで使われても、どんな形になっても、カッコいい事。「大きくしても、小さくしてもクオリティが変わらないデザインが大事 」とサカグチ氏は言う。
彼が手掛けたアート・ワークは、 ロックアパレルブランド Amplifierより発売されている アナログレコードのジャケットをフィーチャーした [VINYL by Amplifier] シリーズでも発売されている。
確かにクッションやTシャツになっても、目を引くカッコいいデザインである。
サカグチ氏は、アートワークを依頼された時、まずは音を送ってもらって、それを聴いてから打ち合わせに臨むと言う。 音を聴いて、イメージを膨らまし、それをデザインする。
彼に言わせれば「音をアート化する」と言う事。
何故、彼が「ロックをデザインする男」と呼ばれるのか、わかった気がした。
パンクとの出会い
今回は、サカグチ氏のアートディレクションに焦点を当ててご紹介したが、次回は、彼の音楽との出会いや、様々なアーティストとの交流などを中心に紹介する。
https://onigirimedia.com/2020/03/06/sakaguchiken2/