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「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」グラフィックノベル・イベントレポート【特集】

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

2019年11月14日、「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」のグラフィックノベル版 作家Renee Nault (ルネー・ノールト)さんのトーク・イベントが、在日カナダ大使館で開催された。

同作は2019年3月にカナダにて出版されている。原作の小説 「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」は、現在 動画配信サービス Huluでドラマ版も放送されており、世界中に多くのファンを持つヒットコンテンツだ。今回はそのイベントの様子、そしてカナダのマンガ事情についてもご紹介する。

そもそも「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」とは?

1985年に発表され、その衝撃的な内容もあり出版後スグにベストセラーとなったディストピア小説。

書籍

原題は「The Handmaid’s Tale」、作者はカナダ人作家 Margaret Atwood (マーガレット・アトウッド) 。カナダ総督文学賞を始め、数々の賞を受賞している作品だ。

世界各国で翻訳版も出版されており、日本では1990年に新潮社が出版。2001年には早川書房より注釈などが追加された文庫本侍女の物語 (ハヤカワepi文庫)が出版されている。

2019年9月には続編にあたるThe Testaments: The Sequel to The Handmaid’s Tale が出版された(日本語訳は未出版)

映画、そしてHuluでのドラマ配信

1990年には映画化もされており、2017年には動画配信サービスHuluにてドラマ版「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」がスタート。

第75回ゴールデングローブ賞では作品賞・女優賞を受賞。第69回エミー賞では作品賞含む最多8部門受賞している。

https://youtu.be/nHB8oYwfgO8

Huluで配信中「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」の特別映像。
エリザベス・モス、ジョセフ・ファインズや制作スタッフのインタビューを含むドラマ紹介動画。

ストーリー

あらすじ:近未来のアメリカに、キリスト教原理主義勢力によって誕生した宗教国家・ギレアデ共和国が舞台。

ギレアデ共和国では有色人種、ユダヤ人は迫害され、他の宗派も認められておらず内戦状態にある。国民は制服の着用を義務づけられており、監視され、逆らえば即座に処刑または汚染地帯にある収容所送り。

環境汚染、原発事故、遺伝子実験などの影響で出生率が低下し、数少ない健康な女性はただ子供を産むための道具として、支配者層である司令官たちに仕える「侍女」となるように決められている。

主人公は、自由と人間性を奪われた道具でしかない侍女のオブフレッド。彼女は恐怖と絶望に耐えながら従順を装いつつ生きていた…..。

子を産むのが侍女の務め「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」シーズン3ティザー予告
人気ドラマ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」シーズン3は
2019年9月13日よりHulu(2週間無料)にて配信されている。

 

hulu

「The Handmaid’s Tale:ハンドメイズ・テイル/侍女の物語 」グラフィックノベルについて

グラフィックノベル「The Handmaid’s Tale」は、2019年3月にカナダで出版された。作画を担当したのはRenee Nault(ルネー・ノールト)さん。

本書の日本語版は未出版だが、紀伊国屋書店及びAmazonで入手可能だ。

Renee Naultさんは、元々イラストレーターとしてカナダを拠点に活躍。
ファッションや音楽等の広告に水彩とインクにて描いた作品を提供、Margaret Atwoodの他小説の広告イラストも描いた事もあるそうだ。

Renee Nault

作画を担当した Renee Nault
(ルネー・ノールト)さん
Website https://www.reneenault.com/

Renee Nault(ルネー・ノールト)
プロフィール

イラストレーターとして活躍していたReneeさんは、マンガにも興味があり、ある時 自分でも描いてみようと思ったが、カナダにはマンガの制作方法を教える学校が無いので、独学でマンガ制作技術を習得したそうだ。

アール・ヌーヴォーのアート作品や浮世絵、アメリカン・コミックの「ヘルボーイ」、 フランスのマンガであるバンドデシネでは「タンタン」、日本のマンガの「AKIRA」や「ナウシカ」等も好きで、影響も受けているとの事。

Renee Naultさんのマンガ「Witchling」他の作品は、彼女のWebsiteで見る事が出来る。

グラフィックノベル「The Handmaid’s Tale」の作画は、原作者Margaret Atwoodの出版社からコミカライズをオファーされて、担当する事になったそうだ。

学生時代に授業で原作を読み感銘を受けていた彼女は、このオファーを非常に光栄に思ったとイベント後に語っていた。

マンガ/グラフィックノベル「The Hands Maid's Tale」の小冊子
会場となった在日カナダ大使館で配られていたグラフィックノベル「 The Handmaid’s Tale 」の小冊子
マンガ/グラフィックノベル「The Hands Maid's Tale」の小冊子から
水彩画で描かれたマンガは全て手作業との事。鮮やかな色彩が美しい。
マンガ/グラフィックノベル「The Hands Maid's Tale」の小冊子から
制作前の設定スケッチより

グラフィックノベルの制作には3年以上かかった

本書はデジタルツールは一切つかわずに描かれており、その制作には3年以上の月日が費やされたとの事。時には木の枝を使ったり、インクに砂や塩を混ぜて描いたシーンもあるとか。

Reneeさんは「デジタルの方が早く均一に制作出来る事は知っているが、私は有機的で人間的な不完全さもあるアナログの手法が好きなので」と語っていた。

また制作開始時にはドラマ版はHuluで配信されておらず、登場人物たちの制服や舞台となったギレアデ共和国の様子等の設定には苦労したそうだ。

「The Handmaid’s Tale」は、1990年に映画化もされているが、彼女は他の人からの影響を受けたくなかったので、観てはいないとの事。

自分のイマジネーションで世界観を作る事は、大変だったが楽しかったとReneeさんは語っていた。(因みに 映画 The Handmaid’s Tale 侍女の物語 の音楽は坂本龍一氏が担当している。)

侍女たちが日本人団体観光客と出会うシーングラフィックノベル(マンガ)版「The Handmaid’s Tale 」小冊子より

とにかくReneeさんが描く絵は、色遣いが鮮やかでとても美しい。侍女たちが日本人団体観光客と出会うシーンは、制服を着た侍女達とカラフルな服を着た団体観光客の服の色の対比=世界の対比を意識して描いたと彼女は語っていた。

グラフィックノベル「The Handmaid’s Tale」は、このシーンだけではなく、全てにおいて色やデティールに細心の注意を払ってReneeさんは描いたそうだ。

登場人物の服装や色が、それぞれの立場を表しており、また現実の自分たちが住んでいる世界に近いが、少し違うと言う世界観も重要だったからとの事。

設定が決定した後、日本のマンガ業界で言われるネーム(下書き)を鉛筆で描き、出版社と原作者のチェックを受け、許可後に色付け等をし、またチェックを受け…

といった作業を何度も何度も繰り返して描いたこの本が、やっとこの春に出版されて大きな喜びを感じていると彼女は語った。

The Handmaid’s Tale (Graphic Novel)A Novel[ Margaret Atwood ]

カナダのマンガ事情

カナダで出版されているマンガ/グラフィックノベル

海外のマンガと言ってスグにイメージするのは、やはりDCやマーベルに代表されるアメリカン・コミックではないだろうか?

それ以外で言うとフランスで出版されているアート性の高いマンガ「バンドデシネ」が知られている。

Reneeさんは「カナダのマンガは、初めはアメリカン・コミック的なものが多かったが1970年代頃から、よりシリアスな内容のマンガも制作される様になった」と語っていた。

Reneeさん自身も影響を受けたマンガとして、アメリカン・コミックやバンドデシネ、そして日本のマンガも上げていたが、現在のカナダのマンガ・シーンについて彼女は「カナダの社会状況にも通じる事だけど、多様であるが故に自分が何者かがわからなくなる=アイデンテティ・クライシスに陥っていると思う。

でも今後はアメリカン・コミックも、バンドデシネも取り入れて、さらにいればどこのマンガか?なんて気にしない世界が来ると思うし、それこそがカナダのマンガの特徴になると思う」と話していた。

イベントに参加して

在日カナダ大使館で開催された本イベントには、多くのマンガ家やイラストレーター、出版系の人たちが参加しており、非常に興味深くReneeさんの話を聞いたり、熱心に グラフィックノベル 「The Handmaid’s Tale」を見たり、 他のカナダのマンガ作品を見たりしていた。

マンガと言えば日本と言うイメージがあるが、世界には様々な、そして優れたマンガ・コンテンツが多数ある。

ドラマを通じて世界的にも知られ、多くの人々に支持される人気小説のグラフィックノベルは、その美しい色使いや作画もあり、日本で出版されても大いに話題になるだろうし、特に深い意味のあるストーリーを読み解く事に長けた日本のマンガ・ファンにはウケるのではないか?と筆者は思った。

海外マンガの翻訳本の出版は、昨今減少していると聞いてはいるが、グラフィックノベル「The Handmaid’s Tale:ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」 が近い将来、日本語に翻訳され出版される事を心より願っている。

https://onigirimedia.com/2020/07/15/graphicnovel-thehandmaidstale-2/

11月21日 在日カナダ大使館開催:映画上映会のお知らせ

2019年11月21日(木)在日カナダ大使館にて映画「Dérive (The Far Shore) 」の上映会が開催される。同映画の言語はフランス語だが英語字幕付きで上映される。

上映後には監督のDavid Uloth氏と脚本家のChloe Cinq-Mars氏が登壇、質疑応答も行うとの事(日・英逐次通訳有り) 。 入場は無料なので興味のある方は、ぜひ参加して欲しい。

※入場は無料ですが事前登録は必要です。詳細は以下にてご確認下さいませ。
※映画の詳細は在日カナダ大使館Facebookの投稿でもチェック可能です。

同映画の言語はフランス語ですが、英語字幕付きで上映されます。上映時間:104分

日程:2019年11月21日(木)
時間:開場・午後6時、開演・午後6時30分~
会場:在日カナダ大使館オスカー・ピーターソン シアター(地下2階)
住所: 東京都港区赤坂 7-3-38
入場:無料(要事前登録)
登録方法:下記項目を明記しemail にて11月20日(木)までにお申し込み下さい。
送信先:tokyo.cc@canadainternational.gc.ca
記入項目:1) お名前(必ずふりがなも明記下さい)、2) 所属、3)電話番号、4)メールアドレス

※登録は定員に達した時点で締切りとなります。
※同行者がいらっしゃる場合は、その方のお名前(ふりがな)も連絡下さい。
※在日カナダ大使館に入館する際には、政府発行の写真付き身分証明書の提示が必須となりますので必ずご持参ください。また入館の際には手荷物検査がございます。
※映画の詳細は在日カナダ大使館Facebookの投稿でもチェック可能です。

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おにぎり1号・Tomoko Davies-Tanaka
Onigiri Media メイン・ライター おにぎり1号こと Tomoko Davies-Tanaka (Team Little-Big) は、フリーランスPRエージェント。海外⇔国内、英語⇔日本語業務を中心に、スモールビジネスのPR業務のサポート他、コーディネーションやブッキングも行っています。 インタビュー記事 https://ledgeweb.com/740/